【R18】死にたがりの姫が目覚めたら、死体愛好家の辺境伯に襲われていました

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第1話_1 ありきたりな継母

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 とりあえず息をして生活していた。息をひそめたりはしていない。


 ある日、オルビス・クラシオン王国の国王である父親が泣きながら訴えてきた。
 ふさふさの白髪に、もこもこの髭。絵本なんかに載っている王様の見た目をしている。
 ついでに言えば、父親は継母と会ってきたばかりなのか、少しだけ強い香水の匂いを漂わせていた。

「お前は成人したら、竜の生贄にならないといけない運命だったんだ」

(話が唐突すぎる……)

 突拍子もない父親の発言に、驚いて良いのか悲しんだ方がいいのか――

(正直、リアクションに困る)

 本来、王家の出身なら亜麻色の髪をしていないといけないのだが、なぜだかわたしの長い髪は白髪。
 そのせいで、わたしの母親は、他の男との不義密通を疑われ、それを苦に自殺してしまった。
 わたしは、その白い毛先を指で少しだけ弄る。
 ちなみに瞳の色は菫色。黄金色の瞳を持つとされる、オルビスの王族の血筋からはかけ離れてしまっている。
 
「お父様、もうずっと死んだお母様のいる天国に行きたいのに行けなかったので、ちょうど良かったです」

 父親に対して、さらりと敬語で伝えた。
 実の父親なのかどうかは分からないけど、わたしはそれなりにこの人からの愛情をもらいたかった。

(結局、もらえはしなかったけれど……)

 そもそも、王家の人間ではない疑惑はわたしに付いて回り、ついぞこの年まで友達と呼べる人物にも、わたしは出会えなかった。

「ヴィオレッタは、竜の生贄になって死にますから」

 わたしはさらりと答えた。
 父親はさめざめと嘆きながら続けてきた。
 予想より泣いている父に、もしかしたらそれなりに自分のことを気にかけてくれていたのかもしれない。

 わたしはそんなことを期待したけれど――。 

「違うんだよ、ヴィオレッタ」

 何が違うというのか――?

「竜の生贄とはつまり、その、竜に身体を捧げるということだ――」

「食べられるんでしょう?」

「食べられるには食べられるんだが、純潔を捧げるんだよ、竜に――そういう意味の食べられるなんだ」

「純潔を、竜に――?」

 頭の中で、竜に処女を捧げる自分の姿を想像した。

(たぶん、あそこ、大きいわよね。無理に決まってるじゃない。何言ってんの……それに、長女の処女喪失に対して、あまりにもあっさりしてるわよね、このおっさん。やっぱり実の親子じゃないから……)

 ひとまず、泣いている父親が部屋から去って行った。
 そのあと入れ替わりに、継母がやってくる。

「おい女狐ヴィオレッタ、陛下がお前にどんな優しい言葉をかけたのかは知る由もないが、調子に乗るんじゃないわよ。お前の生誕祭が近くて浮かれてるんじゃないかい!?」

(なんで、父親に話しかけられて調子に乗らなきゃならないの……っていうか、このおばさん、わたしが竜の生贄になることを知らないのね……)

 ブルネットの巻き髪をした、派手な出で立ちの美人に向かって、わたしはそんなことを考えた。

 
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