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無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる【短編版】
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しおりを挟むまた以前のように、デュランダル将軍が訪問してこない日々が続く。
(あの時のデュランダル将軍は様子がおかしかった……ちゃんと話せば誤解は解けるはず……)
思い出すと胸が苦しい。
そんなある日――。
にわかに街の様子がおかしいことに私は気づき始めた。
(なんだろう、嫌な予感がする……)
時間はじきに夕暮れだ。
胸騒ぎがする中、デュランダル将軍が慌てた様子で屋敷に帰ってくる。
「この間は悪かった……俺と遠出に行ってくれ」
そう言われ夫婦二人で、彼の愛馬に跨る。
先日言っていた遠出だろうかと思ったが、王都から離れた馬は、どんどん西へと向かっていく。
数刻は経ったのではないか――?
休むことなく、デュランダル将軍は馬を走らせた。
※※※
どれだけ速く飛ばしたのだろ、気づけば国境沿いの砦が見える。
砦付近の湖畔で、二人して馬から降りた。
湖の新鮮な空気が肺を満たしていく。月の光でキラキラと水面が輝く。時折、波が岸に跳ね返る音がする。
湖岸線に沿って、デュランダル将軍が先を歩き始めた。
「待ってください――! デュランダル将軍! どうして国境に? 説明してください!」
私が叫ぶと、やっとで彼がこちらを振り返った。
彼は紫色の瞳に強い光を宿しながら、私に告げる。
「……これから王都では反乱がおきる。この国にお前がいては危ない」
彼曰く、今から宰相が国王を暗殺し、王位を簒奪するということだ。
上ずった調子で、私は彼に問いかけた。
「じゃあ……デュランダル将軍は一体どうなるんですか?」
「俺は、国王である兄貴の弟だ。兄貴が負けたなら、責任を一緒にとらないといけない。いくら愚王だと言われようと、俺のたった一人の兄貴だ」
彼が兄を信頼していることを知っているからこそ、胸が詰まって苦しくてしようがない。
「お前をオルビスに戻すように話はついている」
私は首を振る。
「わたしはあなたの妻です……! 最後まで一緒にいたい……!」
「夫婦とは名ばかりだ。俺とお前との間には何もなかった。『体の関係はなかった』と言え。そうして好いた男と添い遂げろ」
「好いた男――それは――」
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「違う――私が好きなのは――!」
私が伸ばした手を、彼が握り返す。
俺なら竜を殺せると、そう言って、私を慰めてくれた時と同じ仕草――。
「私が、好きなのは……」
その場で泣き崩れかけた私の身体を、彼が抱きしめる。
「俺は嫉妬して、お前のことが見えなくなってたんだな」
そうして彼が亜麻色の髪を撫でながら、耳元でささやく。
「今まで出会った女たちの中で、お前だけが俺の本質に気づいてくれたってのに――俺は、お前にはふさわしくない夫だった。またいつか、来世で――もし出会うことが出来たら、お前に今度こそ伝えたいことがある」
「デュランダル将軍――」
そうして私は彼に告げる。
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彼の背に回した手に力を込める。
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