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無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる【短編版】

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(最近忙しいみたいね、デュランダル将軍は……)

 そんなことを考えていると、馬の嘶きと共に彼が帰宅した。

「お帰りなさいませ」

 にこやかに出迎えると、彼もニコニコと笑う。

「お前に話したいことがあるって言ってただろう? 良かったら、その……明日俺と遠出してくれないか……?」

「はい、わかりました」

(デュランダル将軍が、私に話したいこと……)

 なんだか期待で胸がドキドキしてしまう。

 部屋に帰ると、騎士団のコートを脱ぎながら、彼は私に手渡してきた。

「そうだ、お前に聞きたいことがある。国の大事に関わることだ、真面目に答えてほしい。お前の国にいる竜殺しの剣の使い手は、どの程度強いんだ?」

「竜殺しの……」

 思い当たる騎士――紅い髪に碧の瞳をした少年のことを思い出す。

(イリョス……)

 デュランダル将軍が続けた。

「まあ、お前が俺の元に嫁ぐ原因になったのは、そいつだ。俺に負けるぐらいだから、たいして強くないんだろうな」

 彼の言葉に、気づいたら私は叫んでしまっていたのだ。

「イリョスを……馬鹿にしないでください!」

「ああ……?」

 明らかにデュランダル将軍の機嫌が悪くなる。
 そこまでで辞めればよかったのかもしれない。
 けれども、自分が原因で姫様を他国に渡すことになってしまったと沈んでいた幼馴染を悪く言われたのが、どうしても許せなかった。

「彼は、弱くありません……いつも私を護ってくれて……たとえ、デュランダル将軍と言えども、彼を悪く言うのは――」

 そこまでで話は途切れた。

 視界が反転する。

 気づけば、私は彼に組み伏せられ、床に倒れていた。

「口、開け」

「え? ――んんっ――!」

 彼の舌で、無理矢理口を開かされる。そのまま、彼の舌が口中を蹂躙していく。

「あっ……ふあっ……辞めっ……んんっ……」

 抵抗する間もなく、彼の大きな手がドレスの胸元を破り捨てる。
 おもむろに、胸の膨らみを掴まれ、身体がびくりと強張った。

「その男のことが好きなのかよ?」

 ぞくりとするほど、剣呑な目つきで彼が私を見ている。

「や、違います……嫌……辞めて……!」

 彼の手が動き、身体がびくびくと反応してしまった。
 必死に叫ぶが彼の動きが止まることはない。

「じゃあ、なんでかばうんだよ?」

「それは……ああっ……ゃあっ……!」

 彼の手が、荒々しく脚を撫でてくる。

(優しい人だと思っていたのに……!)

「じゃあ、お前は、好いた男から引き離してきた間男に嫁いだってわけか……可哀想だな」

 嘲るように彼は告げた。
 そうして指が下着の中に侵入し、恐怖で濡れた蜜溝へと潜る。

「やあっ……こんなの、いや……」

 割れ目を、ぬるぬると彼の指がなぞり始めた、その時――。


「いや――! 助けて、イリョス――!」


 咄嗟に幼馴染の護衛騎士の名を、私は呼んでいた。

 すると、デュランダル将軍の指の動きがぴたりとやむ。

「あ……あの……」

 彼がぽつりと呟いた。

「最悪な気分だ……他に好きな男がいたとか……」

「え……?」

 私の身体の上から退けると、彼は部屋から去って行った。


「デュラン……なんで……」


 恐怖もあったが、それ以上に胸が軋んで苦しかった。


「なんで、そんなに哀しそうな顔をしていたんですか……?」


 だが、応えてほしいデュランダル将軍が帰ってくることはなかったのだった。



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