上 下
111 / 118
無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる【短編版】

5

しおりを挟む




 それまで全く私の元を訪れてこなかったデュランダル将軍だったが、翌日また姿を現した。

 寝室に入ってくるなり、肩に白猫を乗せた彼は、私に何かを放り投げてくる。

「ほら、お前にやるよ」

「なんですか?」

 私の掌の上で、金の土台に紫色の宝石が載った指輪がコロンと転がった。

「……昨日の礼もかねて、お前に結婚指輪だよ」

「え、えっと……ありがとうございます」

 まさか怪我を治癒したお礼に結婚指輪を渡されるなんて、どう反応して良いか分からないで戸惑ってしまう。
 彼の視線を感じて、私は顔を上げた。

「ひえっ……」

 やはり眉をひそめて、ちょっと怖い顔をした彼に少しだけ怯えてしまう。

「ものを与えてもつられないのかよ……珍しい女だな」

 明らかに機嫌を損ねた顔をして、彼は去って行ったのだった。




※※※



 それから毎日、デュランダル将軍は私の元を訪れるようになった。

 嫁いでから知り合いが全くおらず、話し相手は猫のコハクだけだったので、毎日誰かが来てくれるのが嬉しかった。

 不愛想な表情で彼が私に何かを手渡してきた。

「ほら、お前にこれをやるよ。とにかくなんでも良いから飯を食え。やせっぽっちの女よりも、ちょっと丸いぐらいが可愛げがあるぞ」

「コハクの餌とお菓子ですね」

 コハクにやる餌と一緒に、私にお菓子を買ってきてくれたりする。
 太りそうなのに良いと言ったが、彼は毎日菓子を持ってきた。
 どうやら私の食が細いのを気にしての行動だったらしい。

「あの……いつも、ありがとうございます。デュランダル将軍」

 私が礼を告げると「おう」とぶっきらぼうに、一言だけ彼は返答してきた。

「菓子が好きだなんて、まだまだ女未満のガキだな」

 言い方はきついが、彼の顔が赤くなっているのが分かる。

(照れ屋さん……)

 彼に促されて、私も徐々にご飯も喉を通るようになってきていた。

(デュランダル将軍は対外的には乱暴者だと言われているし、実際にすごみはあるけれど、不愛想なだけで、本当の彼は優しくて、世話好きな男性……)

 私もちょっとずつ、彼に心を開いてきたのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...