上 下
90 / 118
囚われの輝夜姫は、月夜に喘ぐ【後日談】

1※

しおりを挟む
「飛行機で来たらあかんよ。新幹線にしとき!!飛行機に乗ったらあかん!!」
大阪のおばあちゃんが、また電話をかけてきました。
―その夏、東京に住むKさん一家は、お父さんの実家がある大阪に帰省する予定でした。
いつもは新幹線で帰るのですが、その時はKさんのたっての希望で飛行機のチケットを取っていました。
ちなみに、Kさんとは、私の会社と取引のある保険会社の担当者。
当時はまだ小学校にあがったばかりだったそうです。
Kさんは飛行機に乗るのは初めてで、それはそれは楽しみにしておりました。
しかし、おばあちゃんが余りにしつこく言うので、仕方なくお父さんは飛行機をキャンセルし、
新幹線を取り直しました。
Kさんは泣いて駄々を捏ねましたが「来年は必ず飛行機にするから」と宥めすかされてしまいました。
そして当日。大阪のおばあちゃんの家に着き、おばあちゃんの手料理で夕食を食べていると、TV
に臨時ニュースが流れました。
『日航ジャンボ機が行方不明。墜落した模様…』
それは、正に、自分達が乗る筈だった、東京発大阪行き日航123便。
昭和60年8月12日夕方の出来事でした。
ニュースの続報では、事故がどんどん大惨事になっていく。
Kさんは子供心に「もしかしたら、おとうさんもおかあさんも、ぼくも死んでたかもしれない」と
思うと、心底ぞ~っとしました。
お父さんもお母さんも「おばあちゃんが止めてくれなかったら…」と絶句。
おばあちゃんは「死んだじいちゃんが夢枕に立って『飛行機に乗せたらあかん』と言うとったから。
じいちゃんに感謝せなあかんよ」と言ったそうです。  
明石家さんまさんや稲川淳二さんも、この123便に乗る予定であったことは有名ですね。




私の知り合いにニューヨーク在住のKさんという女性がいるのですが、
彼女が、偶然にも夫の命を救うという奇跡を成し遂げました。

彼女は、ちょうどニューヨークでテロのあった前日の九月十日、突然、目の前でもくもくと黒いもやのようなものがうごめいているのに気づきました。
少し症状は違いますが、網膜はく離などを患うと、目の前に黒いハエのようなものが見え始めるということを知っていた彼女は慌てました。
それで急いでかかりつけの日本人の眼科医に診てもらおうとしたのですが、あいにくその眼科医は休診中だったのです。
そこでやむを得ず翌日に大病院で診てもらうことにしたのですが、そこでは日本語が通じませんから、英語が堪能ではない彼女は、
ご主人に翌日病院に着いて来てもらうように頼み込んだのです。

そのご主人は、第一勧業銀行に勤められており、富士銀行と合併するということで、
例の世界貿易センタービルの八十三階に毎日出勤されていたのでした。
欠勤など一度もしたことのなかったエリートサラリーマンのご主人でしたが、愛妻家の彼は奥さんの異常ということで、初めて会社を休まれたのでした。

そして、翌日の朝、黒木さん夫妻は、訪れた大学病院の待合室で、
煙をもくもくと上げている世界貿易センタービルを目の当たりにするのです。

ビルの中央から立ち上る真っ黒い煙は、昨日Kさんが目の前で見た黒いもやにそっくりだったそうです。
その後黒いもやは精神的なストレスによるものだろうと診断されましたが夫妻はそれを全く信じていません。
なぜならあの黒いもやがなければ夫はあの貿易センタービルの崩壊に巻き込まれて死んでいたことは確実だったからです。
当時いっしょに勤めていた夫の同僚は、結局一人も助かることはなかったのですから……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...