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元令嬢の気高き女騎士団長は、幼馴染の年下副騎士団長(旦那)に翻弄されて困ってます!

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 漆黒の髪にサファイアブルーの瞳、長身痩躯の美青年ハデス。
 かなり年下の彼が私の夫になって、はや数年の月日が経った。
 仕事を最優先にしてきたため、まだ我々の間に子どもはいない。とはいえ、夫婦仲は順調だ。家族からはもう三十前後だからはやく赤ん坊を見せてくれと急かされてはいた。

(両親は何もわかっていない……子どもが出来たら、せっかく女性初の騎士団長になったというのに、その地位が危ぶまれる……)

 子どもがほしくないわけでは決してなかったが――イライラしてしまった私は、ハデスとの夜の営みを避け、仕事に入れ込んでしまっていたのだ。

 そんなある日のこと。

 年下の幼馴染兼上司であるランスロット様と、その婚約者の少女オルテンシア様――そんな二人の後ろを、今は夫婦二人、馬で並んで駆けていた。

 この世のものとは思えないほどの美貌を持った白銀の髪に紫色の瞳の美青年ランスロット様と、ローズピンクの髪に金の瞳を持った愛らしい少女オルテンシア様の二人は、兄妹ではなく、れっきとした婚約者同士である。

(我々とは違って、女性が年下の組み合わせだ……)

 ちなみにランスロット様と夫ハデスは比較的年も近い。どちらも綺麗な顔立ちだが、ランスロットの方がより中性的で、ハデスの方が男性らしいと言える。二人の性格をよく知らない女騎士や文官たちは、二人が並んで話すときゃあきゃあ騒ぐのを知っていた。

(見た目だけは二人とも……良いからな……)

 どんどん馬は森の中へと入っていく。
 
 実は、ハデスと私――何週間かぶりに夫婦が揃ったのだが――。

「ペルセ姉さん、男装姿でも綺麗だ」

 馬上から、平然とそんな声を掛けてくるハデスに対して顔が真っ赤になってしまう。

「な……今は任務中だぞ、お、おかしなことを言うんじゃない」

「事実を述べたまでだ。金の髪が白馬の流れる尾のように綺麗だし、そのロイヤルブルーの男性用のコートだって、姉さんの美しさを際立てるためのちょうど良い飾りになっている」

 花言葉で婚約者を口説きまくる幼馴染ランスロット様の影響か、ハデスもこういう気障な台詞をさらさら述べてくるので、何年経っても心臓がもたない。
 
「それに、任務だと言ってもランスロットが一緒なんだから何か起きたとしても平気だろう。あいつもなかなか休みが合わない我々夫婦に気を遣って、任務だと言って連れ出してくれただけだ」

 そう、婚約者のことで頭がいっぱいで、脳内がお花畑に感じなくもない(一応)将軍補佐ランスロット。だけどわりと繊細な彼が、気を利かせてこの任務を組んでくれたのを知っている。

「ペルセ姉さん、もう着くよ」

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