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嘆きの令嬢は、銀嶺の騎士に甘く愛される
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しおりを挟む親友の公爵令嬢リリー・リーリャの屋敷に遊びに行った時のことだ。
わたしと彼女は、いつもように紅茶を飲みながら、お互いの恋の話に花を咲かせていた。
ベルガモットの香りのするアールグレイのお茶に口をつけると、柑橘系の良い薫りが私の鼻腔をくすぐる。
目の前に座るリリーは、とても綺麗な黒髪の持ち主で、侯爵令嬢のわたしよりも身分は高いと言えるのに、気取らない、とても心の優しい自慢の親友だ。
「リリー、聞いてくれる? わたしの恋人の話を」
「良いわよ、ガーネット」
最近、わたしにもついに恋人が出来た。彼はバーンと言い、地方領主の息子だ。彼とは仮面舞踏会で出会った。疑い深いわたしに、時間をかけてめげずに何度も愛を囁いてきた。
バーンの熱烈なアプローチに、次第に絆されていったわたしは、ついに彼の告白を受け入れることにした。
バーンは給金何か月分だろう、とても美しい瑪瑙の指輪を手渡してくれた。しかも、「君の瞳の色に似ているものを選んできたよ。僕と一緒になってほしい」と言い、わたしのコンプレックスでもある赤茶けた髪にそっと口づけてくれたのだ。
幸せの頂点だったわたしは、バーンの求婚を受け入れ、その夜、彼と初めて結ばれたのだった。
「ガーネットは幸せそうで羨ましいわ……私は、イグニス様の優しさに甘えてばかりで……」
「リリー、わたしはイグニス様を見たことはない。だけど、話を聞く限り、あなたに非はないわ。あなたを貶めるようなことばかりする彼は、わたしからすれば、とても良い人間だとは感じない。正直、彼の弟のグラース様が、貴女の婚約者だったら良かったのにと何度も思ったわ」
「いえ、ガーネット、私に魅力がないから、彼は他の女性のもとへ行ってしまうのよ……」
イグニス様と言うのは、イグニス・ロクス様。彼はロクス帝国の皇太子であり、彼女の婚約者である男性のことだ。
話を聞く限り、権力で好き放題している、女好きのろくでもない男だ。
だけど、許嫁であるリリーはイグニス様に妄信していて、一向に耳を傾けようとしない。
「そうかしら、ガーネット、ありがとう。私も彼に愛されるように頑張るわ」
(頑張らなくて良いのよ、リリー。イグニス様は、貴女を騙しているのよ……だけど、結婚したら、イグニス様も彼女だけを見るようになるのかしら……)
儚く笑うリリーが、わたしは可哀そうで仕方がなかった。
(あれから数日、バーンに会えていない。純潔を失って、本当はすごく痛みが強くて、彼になぐさめてもらえれば、気持ちは楽だったのでしょうけど……彼は忙しいもの、贅沢は言ってられないわね……)
わたしはお茶を飲みながら、ぼんやりとそんなことを考えたのだった。
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