9 / 118
凍てつく百合の令嬢は、婚約者の弟に狂おしく愛される
3※
しおりを挟む気づいた時には、彼に対して声をあげて抗議していた。
勝手に涙がこぼれていくのを感じる。
「イグニス様を殺したあなたを許さないわ! あなたへの怒りだけが、私を生きながらえさせている!」
目の前にいるグラース様の端正な顔が歪んだ。
そうして、彼の唇がゆるりと弧を描く。
座る私の頬に、彼の手が伸びてきた。
「だったら、もっと僕のことを憎んでほしい」
彼の顔を見上げる。
暗い水底のような蒼い瞳が、私を睥睨していた。
彼はぽつりとつぶやく。
「あんな男のために、涙を流す必要なんてないのに……」
(あんな、男?)
彼はそういうと、ほの暗い瞳のまま、私の左頬に唇を寄せる。
瞳からあふれる涙を、唇ですくいとっていった後、離れた。
「もっと僕のことを嫌いになって……」
突然、私の唇はグラース様の唇に覆われた。
そのまま、柔らかい彼の舌が私の唇と歯を上下に割り入る。互いの舌の粘膜同士が絡み合い、全身の皮膚の表面にびりびりとした感覚が走る。
「んっうっ……」
彼の舌が口腔粘膜をゆっくりとなぞり、これまでに感じたことのない痺れを覚える。
(なに?)
こんな状況なのに、私は自分の身体が自分のものだったということを、一か月ぶりに強く体感していた。
(体に感覚が……)
慌てて、グラース様の身体を両手で押しのけようとする。だが、彼の両手で手首をつかまれてしまい、しばらく彼に唇を貪られるがままになった。
吐息と共に、彼の唇が離れる。
「イグニス兄さまには、こんなことをされませんでした?」
「まだ、彼とは結婚式の最中で……あなたが入ってきて……!」
かあっとなった私は、グラース様に向かって叫んでいた。
(イグニス様とは、子どもの頃から婚約していたけれど、真面目な方だったから、「結婚までは何もしないでおくよ」って……)
目の前にいるグラース様は、再度私に顔を近づけてきた。
「ねえ、だったら……リリー義姉様の初めては、イグニス兄さまではなくて僕のものだね」
「グラース様! 何をおっしゃって!?」
私は彼に両手首を抑えられたまま、ベッドに押し倒されてしまった。
彼の両手に、私の両の掌を開かれたかと思うと、指を絡まされる。
彼は、私の首筋に唇を押し当て、音を立てて吸い始める。
「あっ……やめてっ……くださいっ! 私はっ、死者の世界で……イグニス様に、純潔を捧げ……ゃあっ……」
「もうイグニス兄さんはこの世にいないし、貴女が彼の後を追うことも僕が許さない。それにあんな男のために、あなたがわざわざ貞操を護る必要はない」
グラース様のほの暗い蒼い瞳が、私の瞳を射るように見つめている。
彼の両脚が、私の両太腿を挟み込むようにしているため、逃げることも叶わない。
「ぁ……私は……」
「勝手に死ぬのは絶対に許さない。ずっと、貴女にはこの部屋で生きながらえてもらう」
17
お気に入りに追加
688
あなたにおすすめの小説
義兄の執愛
真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。
教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。
悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる