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追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される
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しおりを挟む国王に召される当日。
ラピスはベッドに座り、国王が彼女の元に訪れるのを待っていた。婚礼用の純白のドレスを着せられている。
事前に侍女から飲み物を渡されており、それを飲み干していた。たが、それ以外は何かを口にする気力もなかった。
国王に嫁ぐことが決定して以来、シュタールがラピスに触れることはなくなってしまっていた。
(ずっと、彼に純潔を捧げるのを夢に見ていたのに……私が、国王様の前に姿を見せてさえいなければ、こんなことにはならなかった……)
ラピスの金色の瞳からは、ぽろぽろと涙が出てくる。
泣いていると、部屋の中に国王が姿を現した。
彼は王族を意味する紫のゆったりとした衣服をまとっている。シュタールの従弟でもあるため、国王は銀色の髪に紫の瞳をしており、どことなく彼を思い出させた。
「おお、泣くほど僕に会えるのを楽しみにしてくれてたなんて」
(だけど、喋り方はまるでシュタール様とは別人ね)
国でも評判の愚王だ。女性が喜んでいるのか、悲しんでいるのかの区別もつかないのだろう。
彼はすぐに、ラピスにすり寄ってきた。
「あの日、シュタールの屋敷で、竜の聖女を見つけることが出来て本当に良かったなぁ。すぐに差し出してくれたから許したけど、本当だったら聖女を隠していた罪で、彼は牢屋行きだったんだよねぇ」
王の軽い口調の喋り方に、ラピスは段々と気持ちが悪くなってきた。
「まあ、この話は、もう良いかな」
「きゃっ……」
情緒の欠片もなく、彼は彼女を急に抱きしめてきた。
「国王様、性急すぎませんか? まだ、心の準備が……」
無駄な抵抗だとはわかっているが、ラピスはほんの少しで良いから待ってもらいたかった。だけど、すぐに彼は彼女の頭にかかっていたヴェールをはぎ取り、口づけようとしてくる。ラピスは近づいてくる彼の顔を避けた。
(あれ……? なんだか身体が火照って……)
彼女は、自身の身体の様子がおかしいことに気づいた。
「ああ、侍女に渡していた媚薬をちゃんと飲んだみたいだね。初めての子だと、嫌がることが多いんだよね。だから媚薬を使うようにしてるんだ」
ラピスは、国王からベッドに押し倒される。
国王が、彼女の身体の上に馬乗りになった。
男の身体を欲するように仕向けられたラピスの身体は、うまく抵抗することが出来なかった。
(もう、無理ね……初めては、シュタール様が良かった)
彼女が悲痛な覚悟を決めて、目をぎゅっと瞑った時――。
「ぐうっ……!」
国王のうめき声が聞こえたかと思うと、彼女の身体の上にずんとした重みがのしかかる。
錆びた匂いが鼻につく。
(何……?)
恐る恐るラピスが目を開けようとすると――。
「ラピス、俺が言うまで、まだ目は開けるな」
(この声……)
男に命じられるがまま、彼女は瞼を閉じたままでいる。
そうしているうちに、身体にかかっていた重みがふっと軽くなった。
「きゃっ……!」
肩と膝の裏に何者かの腕が通され、ラピスの身体が抱き上げられる。
「まだ、目は開けたらだめだ」
(この声、シュタール様で間違いない)
遠くで、がちゃがちゃと武器が鳴る音が聴こえる。
(外で一体何が?)
続いて、扉が大きく開く音がした。
「シュタール様! 部屋の準備は出来ております、急いでください!」
「分かった。では、これから俺と『竜の聖女』は、儀式に入る。誰も近寄らせるなよ」
そう言って、元いた場所からラピスは連れ出された。
(儀式って何かしら……?)
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