あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)

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「アメリア、今日も元気で可愛いね……!」

「きゃあっ……! シャーロック様っ……」

 起き抜けに、後ろから夫に抱きしめられていたことに気づく。
 昨晩の情事のまま、自分は裸のままのようだったが、夫の方はもう着替えてしまっているようだった。

「お、起きたばっかり、お仕事……!」

 背後から伸びた彼の手が、ぎゅっと身体を抱きしめてくる。
 彼がハイバリトンのよく通る声で告げてきた。

「本当は一日中、君と過ごしていたいんだけど……仕事があるから、君をしばらく抱きしめてから出発しようかなと……」

「シャーロック様……」

 しばらく抱きしめられて過ごす。

「じゃあ、続きはまた夜にでも、行ってくるよ」

 ちゅっと口づけると、彼は私から離れた。
 彼の体温が離れて、少しだけ寂しさが湧いてくる。

「はい、行ってらっしゃい」

 そうして、仕事に出る彼を見送ったのだった。



※※※



「よし、完成したわ!」

 シャーロック様が本来マーガレット様に渡そうと思っていた空色のドレスが、ついに完成を果たした。
 衣服を箱に仕舞うと、そっとリボンをかける。
 
 以前、シャーロック様に「完成したらどうするつもりなのか?」と問われていたが、自分の中でどうするかは決めていた。

「行きましょう」

 まだ昼間だから、供をつけずに出ても大丈夫のはずだ。

 完成した足で、私はドレスの本来の持ち主の元へと向かったのだ。



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