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 教会の門扉をくぐり、緑に覆われた中庭を抜ける。

 教会群にある聖堂や孤児院、修道院の隣を駆け抜けた。

 昔、慈善事業で孤児たちとよく遊んだ場所だ。
 自分にとっても庭のような場所であり、広い敷地だが迷うことはない。

 脚が棒になりそうなほど疲れていた。
 だが、足を止めずに、奥にある道へと向かう。

 肺が潰れそうなほどに走ったが、どうにかして今日中に夫の姿を探したかった。

 墓地に向かうための林が夕陽を遮り、少しだけ鬱屈とした雰囲気の舗装された道を駆け抜ける。

 途中、驚いた顔をした参拝者たちとすれ違った。

 黒い喪服を身に纏う年若い女性が戻っていく脇を走る。

 開けた場所に出た。

 夕暮れ時の眩しい光が、眼を刺激してくる。

(シャーロック様……!)

 大木の向こうに、立ち並ぶ、十字架の描かれた石碑群。

 もう帰り時なのだろう。

 墓地には誰もいなかった。

(シャーロック様……いない……)

 ぱっと見た判断では見当たらない。

(だんだん辺りが暗くなっていく……そのせいで見つけづらいだけなのかも……)

 そう思って、暗くなる中、墓地で不謹慎だとは思ったが、きょろきょろと走り回った。

(確か、マーガレット様の石碑はこの辺りに……)

 目を凝らす。

 もうすっかり夜の帳に包まれてしまった。

 年若い女性が一人このような場所にいては危険だろう。

 だが、そんなことは気にしていられない。

(シャーロック様……お願い……)

 マーガレット嬢の石碑にたどり着いた。

 だが――。


「シャーロック様……やっぱりいない……」

 
 ――勘は外れてしまったようだ。

(朝来ているんだもの……そんな都合よくシャーロック様がいらっしゃるわけなかったわ……)


 その時――。


 ぐいっと誰かに腕を掴まれた。


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