あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)

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(今のは……)

 うとうととしていると、ギシっとベッドが軋む音が聴こえる。

 いつの間にか、うつぶせになって眠ってしまっていたようだ。

(シャーロック様、帰ってきた……?)

「アメリア……」

 名前を呼ばれたかと思うと――。

「ひゃっ……」


 身体を動かしたかったが、ちょうど膝のあたりに軽く誰かが乗っているようだ。


(突然、何……?)

 上に乗っているのは夫で間違いないのだが――。


「君が俺から離れなくなるにはどうしたら良い……?」

 彼の様子が、おかしいことに気づく。

(シャーロック様、どうしたの……?)

 スカートの裾から、大きな手が侵入してきた。

「あ、あの……!」

「アメリア――俺は――」

 名を呼んでくる彼の声に焦りを感じた。

「ダメなんだ――もう他に君を引き止める術がよく分からないんだ……」

 そう言うと、私の身体を彼が覆ってくる。
 首筋を彼の唇が這う。

「あ、あの……」

 唐突な展開で心がついていかなかった。

「――アメリア」

 彼の唇が肌に花びらを散らしはじめる。
 
 起き抜けの突然の行為に、困惑してしまう。


(さっきから、どうしてしまったの、シャーロック様……)

 気づけばスカートの裾をめくりあげられ、両脚が顕になってしまった。


「待ってください! これ以上は……だ……ダメですっ、シャーロック様っ……!」


 上に乗っていたシャーロック様の身体が、びくんと跳ね動いたのが分かる。

「あ……」

 彼の唇がそっと背から離れていく。


「すまない……俺は……どうして、こんな……」


 彼の声が震えている。


「アメリアは――俺よりも先に、サー・ヴィンセントが求婚してきていたのなら――君は彼と結婚していたの?」

「え――?」

 唐突な質問に感じた。

 だが、仮に資金援助を申し出ていたのがエドワードが先だったならば、確かにどうなっていたのかは分からない。

「それは……実際にはそんなことは起きてなくて……」

 なんとか彼に答えることが出来た。

「結局、君が俺と結婚したのは――没落した実家を助けるためでしかない……だけど、そう、初めからそういう契約だったんだ……すっかり、俺がそれを忘れていて……」

(シャーロック様……)

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