上 下
110 / 122
最終章 満天の星の下、消えゆく君と恋をする

最終話ー1 満天の星の下、消えゆく君に恋をする

しおりを挟む

 蒼汰は暗闇の中にいた。
 真っ暗だが、なんとなく自分が幼い頃の姿に戻っていることに気付いた。

(ここは?)

 キョロキョロしていると、目の前に女性が姿を現わした。
 柔和な笑顔を浮かべ、緩やかな髪をサイドに流しており、紺色のワンピースに身を包んでいた。
 暗闇だが、彼女の姿だけが輝いて見える。

「母さん!」

 声に出した瞬間、周囲が明るくなる。
 気付けば本土の七色に光る不思議な砂浜にいた。
 幼い蒼汰の掌には、キラキラした流れ星の欠片のような石――シーグラスがあった。

(これは俺の小さい頃の記憶だ)

「蒼汰、強い想いや願いは、必ず貴方の力になって、奇跡だって起こせるわ。だから、蒼汰、あなたの願いも絶対に……」

「ママ……?」

 そうして、掴んだ石ごと蒼汰の手を母がぎゅっと握りしめる。

「蒼汰、だけどね、願い事には……」

「ねがいごとには?」

「代償がつきものだっていう話もあるのよ」

 蒼汰の母がそっと伏し目がちになった。

「だいしょう?」

「そう、代償。代わりの何かね。願い事を一人で叶えようとしても難しいし、何かの犠牲を払わないといけないかもしれない。一人で願い事を叶えるのは大変なのよ……だけどね」

 彼女がふっと頬を綻ばせる。

「もしも、他の誰かと一緒なら、一人だと難しい願いでも、一緒に願えば叶いやすくなるかもしれない」

「誰かといっしょに?」

「そうよ。もちろん、一人だけでも強い願いなら叶うかもしれない。だけど、とてつもなく大きな願いだったとしたら、一人では叶えきれない願いでも――二人なら――誰かと一緒なら叶えることができるかもしれない」

 そうして、母が慈しむような笑顔を蒼汰に向けた。

「蒼汰、どんな時でも、母さんは星になって貴方を見守っているから。だから、さあ、まだ貴方が星になるのは早いわ。いいえ、そうね」

 母と一緒に握る掌がやけに熱を帯びていた。

「蒼汰、彼女の星になってきなさい。母さんがちゃんと彼女を貴方のそばに送り届けるから」

 その時、蒼汰の掌の石が光を放ちはじめたのだった。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

魂の集う場所へ ~最後に誓った想い~

花房こはる
青春
「アカシック・ギフト・ストーリー」シリーズ第7弾。 これは、実際の人の過去世(前世)を一つのストーリーとして綴った物語です。 貿易商を父に持つシュリアは、幼馴染のサイとお互い気兼ねなく付き合える仲だった。 ある日、サイの家が火事になり、全焼してしまった。サイは、財産すべてを失ってしまったサイの家族を支えるため、シュリアの父の貿易船の下働きとして働くことになった。 ずっと一緒だった二人の人生が違う道へと分かれてしまった。 いつか再び二人がともにまた同じ道を歩むことができるよう、シュリアは願い動き出す。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】ぽっちゃり好きの望まない青春

mazecco
青春
◆◆◆第6回ライト文芸大賞 奨励賞受賞作◆◆◆ 人ってさ、テンプレから外れた人を仕分けるのが好きだよね。 イケメンとか、金持ちとか、デブとか、なんとかかんとか。 そんなものに俺はもう振り回されたくないから、友だちなんかいらないって思ってる。 俺じゃなくて俺の顔と財布ばっかり見て喋るヤツらと話してると虚しくなってくるんだもん。 誰もほんとの俺のことなんか見てないんだから。 どうせみんな、俺がぽっちゃり好きの陰キャだって知ったら離れていくに決まってる。 そう思ってたのに…… どうしてみんな俺を放っておいてくれないんだよ! ※ラブコメ風ですがこの小説は友情物語です※

🍞 ブレッド 🍞 ~ニューヨークとフィレンツェを舞台にした語学留学生と女性薬剤師の物語~

光り輝く未来
青春
人生とは不思議なことの連続です。ニューヨークに語学留学している日本人の青年がフィレンツェで美しい薬剤師に出会うなんて。しかも、それがパンの歴史につながっているなんて。本当に不思議としか言いようがありません。 でも、もしかしたら、二人を引き合わせたのは古のメソポタミアの若い女性かもしれません。彼女が野生の麦の穂を手に取らなければ、青年と薬剤師が出会うことはなかったかもしれないからです。 ✧  ✧ 古のメソポタミアとエジプト、 中世のフィレンツェ、 現代のフィレンツェとニューヨーク、 すべての糸が繋がりながらエピローグへと向かっていきます。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...