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第5章 荒れ狂う海、消えゆく君を追いかける
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しおりを挟む数日後、美織の入院先にほのかが面会に現れた。
『ほのか、蒼汰お兄さんのこと、ごめんなさい』
ベッドの上、ほのかに顔向けできずに、美織はぎゅっとシーツを握りしめる。
すると、ほのかがケラケラと笑った。
『蒼汰お兄ちゃんのことは、ほのかが気にすることないよ。むしろさ、感謝してる』
『え? どうして?』
『周りの大人たちはさ、無断離院して海に向かった美織のことを悪く言うこともあるけど……』
笑うほのかの瞳には涙が光っていた。
『お兄ちゃん、あれだけ活発だったのに、最近はずっと引きこもっててさ。もう選手として活躍できないって苦しんでたの知ってたけど、私とお父さん、何にも出来なかった。だけどさ、台風の海にわざわざ海に行ってたわけじゃん。ふつうは行かないよね、そんな時、だからさ、お兄ちゃんはきっと……』
ほのかの唇が戦慄いた。
きっと、美織と同じような想像をしたのだろう。
それ以上、彼女が何かを口にすることがなかった。
『兄ちゃん、あんななったけど、なんだか幸せそうな顔していたし……海の中に入って、あんた助けて本望だったと思う』
けれども、結局は今の話だって、ほのかの想像でしかない。
蒼汰が何を考えて台風の海に近づいていたのか、今となっては知る由もない。
泣きそうになりながら話すほのかが泣かないから……
……結局、彼の未来を奪う原因になった自分には泣く権利なんてないと思った。
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