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第5章 荒れ狂う海、消えゆく君を追いかける
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しおりを挟むすると、蒼汰が盛大に溜息をついた後、気を取り直したように口を開いた。
『まあ良いか……もしかして、お前んとこも片親なのか?』
『かたおや?』
『今の言い方だと、お前、父親がいないんだろう?』
『うん、そうです。お父さん、星を一緒に観ようって約束してたのに……』
美織の瞳にうるうると涙が浮かぶ。
すると、蒼汰が彼女の頭を優しく撫でた。
『悪いな。そうか、俺のとこと似たような感じなんだな』
ふと、蒼汰が何か思いついたのか、ポンと手を打った。
『そうだ、星好きのお前にこれやるよ』
そうして、蒼汰が作務衣の懐からとあるものを取り出すと、美織の目の前に掲げた。
『ほら、流れ星の欠片だよ』
『わあ、綺麗……!』
彼女は感嘆の声を上げる。
目の前にはキラキラ七色の石と砂が詰まった小瓶。
『強い願いは絶対に叶うんだってさ』
蒼汰が淡く微笑んだ。
美織は歓喜に満ちた笑みを浮かべる。
『まるで天の川みたい……!』
『へえ、やっぱりお前、面白い表現するな。母さんは人魚の涙だとか浜辺の宝石だって言ってたがな』
ふっと蒼汰が寂しそうに笑った。
『お前のことを見てたら、母さんのことを思い出したよ』
『え?』
美織が今度は目をお月様みたいに真ん丸に見開いた。
『母さんもお前みたいによく星を眺めてたな。死ぬ間際にも星になって俺とほのかのことを見守ってるって言ってたし。あの星のどこかに俺の母さんもお前の父さんもいるんだろうな』
そうして、彼が続ける。
『母さん、俺が泳ぐのを楽しそうに観てたけど……一緒に泳ぐって約束、叶えてはくれなかったな』
遠くを見る蒼汰を見ていると幼い美織の心臓がぎゅっと何かに掴まれたような気がした。
彼女はぐっと唇を噛み締めると彼に向かって思いきりよく告げた。
『だったら、みおが―――‐―――――』
すると、強面の蒼汰がまるで太陽のように微笑んだ。
『ありがとう、だったら俺も――――――』
まだ小さな美織の心臓がドキドキ高鳴りはじめる。
『約束だ』
『約束』
そうして、美織がねだると蒼汰がやれやれと首を振りながらも指切りを交わしてくれた。
(えへへ、約束しちゃった)
そうこうしていたら迷子のほのかが遠くで見つかったから、美織は蒼汰の元へと連れていった。美織の母親も現れたところで蒼汰と別れることになった。
『じゃあな、今度ははぐれるなよ』
太陽みたいに笑って手を振ってくれた蒼汰。
それからしばらく、なんだかドキドキして落ち着かなかった。
友達のお兄ちゃん。
ほのかに聞いたら、名前は蒼汰だって教えてくれた。
『そうた、漢字、難しいな』
まだ習っていない漢字だったけれど、蒼と汰はしっかり書けるようになっていたのだ。
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