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第5章 荒れ狂う海、消えゆく君を追いかける
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『ああ、見ろよ、ここからは星がたくさん観れるんだぜ。星のことは詳しくないけどさ、すげえよな、天の川』
『ええっと、あの星はね、夏の大三角形っていうんだよ』
『へえ、面白いな、お前、まだ小さいのに星に詳しいんだな。中学の俺より詳しいじゃんか』
『えへへ』
褒められて嬉しかった。
お母さんは仕事で忙しいからテストで良い点を取っても、あんまり褒めてはくれないのだ。褒めるつもりがないわけじゃなくて時間がないのは、今なら分かるけど、当時の美織からしたら悲しかった。
『織姫と彦星か、一年に一回しか会えないっていう』
『ええっと、みおは、その話が好きなの。あと、人魚姫』
すると、蒼汰がズバリと告げた。
『結構趣味が暗いのな』
『ええっ……!』
暗いと言われたのは初めてだった。
『悪い意味じゃねえよ。そういう悲恋系統が好きなのも悪かないだろ』
『ひれん……?』
『ああ、悲しい恋って書くんだよ。小二じゃあ、まだ習ってないのか、漢字』
『悲しい恋』
『そうだ、一年に一回しか会えないとか罰ゲームも良いとこだし、助けた王子が別の女と結婚して自分は泡になるとかさ。逆で考えたら腹立つしな、助けたお姫様が別の男と結婚したらって。ほら、まさに悲恋だろう』
やけに詳しい。
『ほのかのお兄ちゃんは、なんで、そんなこと知っているの?』
『ああ、死んだ母親がそういう物語が好きだったから覚えちまったんだ』
蒼汰が遠い目をした。
(みおはお父さんがいないけど、ほのかのお家はお母さんがいないって話してた気がする)
美織は思い切って口を開く。
『……みおはね』
『ん?』
『みおは、一年に一回でもいい、好きな人に会えるなら、それはしあわせだと思う。あとは、好きな人がしあわせなら、それが良いなって』
すると、蒼汰が感嘆の声を漏らす。
『へえ、お前、結構面白いこと考えてんだな? そんな考えは俺からは出なかった』
『え?』
『褒めてるんだよ』
彼に微笑みかけると、なぜだか心臓がドキンと大きく高鳴った。
『なんだろう? ドキドキする』
『……? なんだよ、お前、胸に手を当てて?』
蒼汰を見ているとドキドキドキドキ落ち着かない。
(なんだろう、この気持ち……もしかして……?)
美織は思い切って深呼吸をすると、自身が抱いている気持ちを蒼汰に率直に伝えた。
『ほのかのお兄さんと一緒に過ごしてみて、お父さんがいたらこんな感じなのかなって思いました』
『は? まだ中学生なのに親父扱いかよ』
蒼汰のぼやきを耳にして、美織は内心オロオロしてしまう。
(変なことを言っちゃった?)
『ええっと、あの星はね、夏の大三角形っていうんだよ』
『へえ、面白いな、お前、まだ小さいのに星に詳しいんだな。中学の俺より詳しいじゃんか』
『えへへ』
褒められて嬉しかった。
お母さんは仕事で忙しいからテストで良い点を取っても、あんまり褒めてはくれないのだ。褒めるつもりがないわけじゃなくて時間がないのは、今なら分かるけど、当時の美織からしたら悲しかった。
『織姫と彦星か、一年に一回しか会えないっていう』
『ええっと、みおは、その話が好きなの。あと、人魚姫』
すると、蒼汰がズバリと告げた。
『結構趣味が暗いのな』
『ええっ……!』
暗いと言われたのは初めてだった。
『悪い意味じゃねえよ。そういう悲恋系統が好きなのも悪かないだろ』
『ひれん……?』
『ああ、悲しい恋って書くんだよ。小二じゃあ、まだ習ってないのか、漢字』
『悲しい恋』
『そうだ、一年に一回しか会えないとか罰ゲームも良いとこだし、助けた王子が別の女と結婚して自分は泡になるとかさ。逆で考えたら腹立つしな、助けたお姫様が別の男と結婚したらって。ほら、まさに悲恋だろう』
やけに詳しい。
『ほのかのお兄ちゃんは、なんで、そんなこと知っているの?』
『ああ、死んだ母親がそういう物語が好きだったから覚えちまったんだ』
蒼汰が遠い目をした。
(みおはお父さんがいないけど、ほのかのお家はお母さんがいないって話してた気がする)
美織は思い切って口を開く。
『……みおはね』
『ん?』
『みおは、一年に一回でもいい、好きな人に会えるなら、それはしあわせだと思う。あとは、好きな人がしあわせなら、それが良いなって』
すると、蒼汰が感嘆の声を漏らす。
『へえ、お前、結構面白いこと考えてんだな? そんな考えは俺からは出なかった』
『え?』
『褒めてるんだよ』
彼に微笑みかけると、なぜだか心臓がドキンと大きく高鳴った。
『なんだろう? ドキドキする』
『……? なんだよ、お前、胸に手を当てて?』
蒼汰を見ているとドキドキドキドキ落ち着かない。
(なんだろう、この気持ち……もしかして……?)
美織は思い切って深呼吸をすると、自身が抱いている気持ちを蒼汰に率直に伝えた。
『ほのかのお兄さんと一緒に過ごしてみて、お父さんがいたらこんな感じなのかなって思いました』
『は? まだ中学生なのに親父扱いかよ』
蒼汰のぼやきを耳にして、美織は内心オロオロしてしまう。
(変なことを言っちゃった?)
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