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第5章 荒れ狂う海、消えゆく君を追いかける

25-1 流れ星の欠片の正体

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 蒼汰は神社に辿りついていた。

「もう少し美織から詳しい状況を聞いておけば良かったな」

 夏祭りの際に美織が話していた通り、彼女が隠したという「流れ星の欠片」とやらは見つからなかった。

「さすがにないか……」

 台風が近づいてきているからか雨が少しだけ降り始めている。

(確かこの辺りだったよな……)

 美織に何か渡した時の記憶を完全に思い出したわけではない。
 断片的な思い出の中、蒼汰はキョロキョロとクスノキの下を探し回った。

(ほのかだって探したのになかったんだし、俺が探したところで見つかるわけはないか)

 だが……


『蒼汰、強い想いや願いは、必ず貴方の力になって、奇跡だって起こせるわ』


 脳裏に幼い頃の母との記憶が思い返される。

(俺が諦めたらそこで終わりだ)

 蒼汰はぎゅっと拳を握りしめる。
 やみくもに探しても埒が明かないかもしれない。
 どうにかして記憶を辿ろうとしていた、その時。

「あれは?」

 視界の中で何かが光った。
 蒼汰は目を凝らすが、しかしながら特に光るようなものは何もない。

(俺の希望でしかないかもしれない。だけど、少しでも望みがあるんなら……!)

 そうして、彼は少しだけ離れたクスノキの下にしゃがみ込むと、土を掘り起こし始めた。

(俺の記憶が正しければ、流れ星の欠片ってやつは確か……)

 指先の爪の間に土が入るのも気にせずに、その場を掘り起こしていく。
 その時――

 カツン。

 何かに指先が触れた。
 土をさらに掘り返す。

「これだ……!」

 蒼汰は掘り当てたものを目の前に掲げた。
 彼の手には親指ぐらいの大きさのコルク瓶があった。
 中には色とりどりの石粒が入っている。

「ええっと、確か石じゃなくて……」

 コルク瓶に詰め込まれているのは――シーグラス。
 本当の流れ星の欠片ではない。
 そして石とも違う。
 シーグラスとは浜辺に漂流したガラス片のことだ。
 波に揉まれて丸みを帯びた曇りガラスのようになっている。
 まるで研磨された宝石の粒のようで……まるで星々のようにキラキラと輝いていた。

「小瓶の中の小宇宙か」

 そこで蒼汰は閃いた。
 母親と一緒に砂浜で拾った大事なシーグラス。

「そうか、俺はこれを美織に……」

 ふと、彼女から受け取っていた根付を預かっていたことを思いだした。
 預かって以来、スマホケースにストラップ代わりにつけておいたのだが……
 突如、根付の紐がプチンと切れる。

「な……」

 特に雑に扱ったわけでもなんでもないというのに……

「なんで急に切れるんだよ」

 お互いのお守り替わりとして渡し合ったものが千切れてしまうだなんて、なんだか不吉な予感がした。

「まさか美織に何かあったんじゃないだろうな?」

 さすがに根付の紐が切れたぐらいで思い込みが激しいだろうか?
 だが、風でがたがたと震える窓の外を眺めていると、生前の蒼汰が幼い美織を庇った際の記憶が閃く。

(あの日もこんな嵐だった)

 心臓が大きな鼓動を立て始める。
 もし違ったのなら、女々しいしかっこ悪いかもしれないが……
 そうならば、安心だ。この根付を返して、無事に手術が成功することを祈るのみである。

「直感を信じろ」

 そうして、蒼汰は美織が入院している病院へと向かうことにしたのだった。

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