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第4章 夏の終わり、消えゆく君が別れを告げる

18-4 (蒼汰の記憶1)

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『なんで泳げないのに俺は海に来てるんだろうな、マジでダサいよな』

 空は灰色の雲に覆われている中、蒼汰は海岸線沿いのガードレールに腰をかけて海を眺めていた。
 家にいたら気が滅入ってしまって、ここまで歩いてきたのだ。
 ちょうど小高い山の麓の海岸線。見上げれば島唯一の総合病院がある。
 ポツリポツリと雨が降り始める。
 夏だというのにどことなく薄暗い。
 ニュースでは台風が接近しているとの情報が入ってきていた。
 砂浜から防波堤へと移動する。いつも以上に波が荒れていて、コンクリートの壁に激しくぶつかっていた。
 立っている蒼汰にも水飛沫がかかってくるほどだ。

『こんなに海が荒れてるんじゃあ、泳げるわけでもあるまし』

 危険だと分かっていたのに、どうして出てきてしまったんだろう。
 水泳という心の拠り所をなくした自分をどうにかしたかったのだろうか?
 もういっそ波に呑まれて海に消えてしまいたかったのかもしれない。
 それほどまでに蒼汰は追い詰められてしまっていた。
 どこに行けば良いか、どこに行っても安息地など存在しない。
 一緒に頑張ってきていた幼馴染の恭平。
 彼とあんなに一緒に過ごしていたのに、もうすっかり疎遠になってしまった。
 水泳を失ったことで、蒼汰は全てを失ったのだ。
 このまま雨に打たれて、風邪を拗らせて死ねば本望だろうか。

 ……死にたい。

 だからここに来たんだろうか。
 もういっそ、ここで海に飛び込んで、自身を放棄してしまえば良い。

『そうだ、ここで俺は……』

 最低最悪の覚悟を決めた、その瞬間。

『お兄ちゃん、ダメ、行かないで!』

 ふと、傘も持たずにこちらに向かって駆けてくる少女の姿が目に入った。
 そうして――
 どこまでも高い波が自分たちを襲ってきて……

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