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第3章 夏祭りの夜、輝く君とキスをする

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 そうして、パンと乾いた音が響いたかと思うと、目当てのぬいぐるみが揺らぎ、台の上に倒れた。
 美織が歓喜の声を上げる。両手を上げて、その場でピョンピョン跳びはねている。

「やったあ! ずっと欲しかったぬいぐるみをゲットだよ! ねえねえ、君も見た見た?」

「ああ、ちゃんと見たよ、見た見た」

 そもそも蒼汰が美織の手伝いをしたのだから、見ているに決まっている。
 うんうんと適当に相槌を打っていたら、美織がぷうっと頬を膨らませる。
 彼女の腕の中には射的のおじさんに貰った景品のぬいぐるみがある。遠目で見たら可愛かったが、近くで見ると割と縫製は雑で、どことなく本来のイラストとは違う何者かになっている気がしたのだが……美織はといえば、今まで手に入らなかったものが手に入った喜びの方が強いようだった。

「もう、君、ちゃんと聞いてるの?」

「もちろんだって」

 ぬいぐるみを抱き抱えたまま、愛らしい表情で迫られると心臓に悪い。

「ほら、行くぞ」

「あ、待って!」

 そうして、再び二人で並んで歩きだす。
 ものすごい勢いで喜んでいたはずなのに、再び何か不満げに口を尖らせていた。
 とにかくクルクル表情がよく変わる女性だ。

「せっかく目当てのものが獲れたってのに、今度は何が不満なんだよ?」

 すると、美織がぽつりと呟く。

「この子、ふわふわしてて気持ちが良いんだけど、抱っこしたままだと、君と手が繋げないんだもん」

「は……? 俺と、手が繋げない?」

「そうだよ、そう言ってるの」

 美織がぬいぐるみに顔を埋めながら、蒼汰のことを見上げてきていた。

「な…にを……」

 思いがけない返答があって、蒼汰は顔が紅潮してしまった。
 美織は本当にしょげているようだったので、彼は機転を働かせる。

「ああ、ほら、だったら、貸してみろよ。そのイマイチ可愛くないやつ」

「可愛くないって失礼ね、ぶさ可愛いでしょう?」

「ぶさ可愛い、なんだよ、そりゃあ」

 そうして、美織から巨大なぬいぐるみを受け取ると片腕で抱きかかえ、反対側の手を差し出した。

「ほら、これで良いだろう?」

「……うん、ありがとう!」

 彼の掌の上に彼女の小さな手が乗ると、少しだけ躊躇いながら握り返したのだった。


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