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第3章 夏祭りの夜、輝く君とキスをする
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山下先生と似たような声色だ。けれども、蒼汰の知る威厳のある喋り方というよりも、どことなく若くて軽妙な口調に感じた。
蒼汰は違和感を覚えつつも、選手生命が絶たれた際の出来事がフラッシュバックして木霊してきて、全身が何者かに支配されてしまったかのようで、苦しくておかしくなってしまいそうだった。
呼吸も脈拍数も勝手に上昇していく。
そんな中、山下先生とほのかとが会話を繰り広げはじめた。
「ほのか、普段のお前が遅いから俺が合わせてやったんだよ」
「はあ? その言い方、マジでむかつくんですけど……若い女子高生の私が、あんたと一緒にいてあげるだけ良かったと感謝しなさいよね?」
「強気だな。こんな奴に育ったって知ったら、兄貴が悲しむぞ」
「お兄ちゃんは悲しまないわよ、あんたが一番知ってるでしょう? まったくもう……!」
どうしてだか彼らの会話が頭に響くだけで浸透してこない。
蒼汰は胸をかきむしりながら、ゆっくりと背後を振り向く。
ドクンドクンドクンドクン。
そうして――
「……!」
山下先生と呼ばれた男の顔を見て絶句してしまった。
なぜならば、そこにいたのは――
「なん、で……?」
喉がひりひりと乾く。
「どうして……?」
胃の中がぐわんぐわんと揺れ動くようだ。
何やら調子が悪くて仕方がない。
目の前に立っていたのは、山下先生。
だけど――
「何がどうなって……?」
この中にいる四人の中では、一番身長が高くがっちりした体格の男。短く刈り込んだ髪に、人の良さそうな垂れ眼に、穏やかな微笑。いわゆるイケメンではないが、愛嬌のある顔立ちをしている。
確かに知っている山下先生によく似ていた。
だけど……
蒼汰のよく知る山下先生よりも年若い青年だったのだ。
蒼汰は違和感を覚えつつも、選手生命が絶たれた際の出来事がフラッシュバックして木霊してきて、全身が何者かに支配されてしまったかのようで、苦しくておかしくなってしまいそうだった。
呼吸も脈拍数も勝手に上昇していく。
そんな中、山下先生とほのかとが会話を繰り広げはじめた。
「ほのか、普段のお前が遅いから俺が合わせてやったんだよ」
「はあ? その言い方、マジでむかつくんですけど……若い女子高生の私が、あんたと一緒にいてあげるだけ良かったと感謝しなさいよね?」
「強気だな。こんな奴に育ったって知ったら、兄貴が悲しむぞ」
「お兄ちゃんは悲しまないわよ、あんたが一番知ってるでしょう? まったくもう……!」
どうしてだか彼らの会話が頭に響くだけで浸透してこない。
蒼汰は胸をかきむしりながら、ゆっくりと背後を振り向く。
ドクンドクンドクンドクン。
そうして――
「……!」
山下先生と呼ばれた男の顔を見て絶句してしまった。
なぜならば、そこにいたのは――
「なん、で……?」
喉がひりひりと乾く。
「どうして……?」
胃の中がぐわんぐわんと揺れ動くようだ。
何やら調子が悪くて仕方がない。
目の前に立っていたのは、山下先生。
だけど――
「何がどうなって……?」
この中にいる四人の中では、一番身長が高くがっちりした体格の男。短く刈り込んだ髪に、人の良さそうな垂れ眼に、穏やかな微笑。いわゆるイケメンではないが、愛嬌のある顔立ちをしている。
確かに知っている山下先生によく似ていた。
だけど……
蒼汰のよく知る山下先生よりも年若い青年だったのだ。
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