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第3章 夏祭りの夜、輝く君とキスをする

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(その言い方だとまるで、普段はいつも昼空と一緒にいるみたいじゃないか)

 少女がカラカラと笑う。

「ふうん、学はさ、あんたのことばっかり追いかけてるじゃん。あんたの憧れの人のことだって知ってるけどさ、もう色んなことは忘れちゃって、さっさと学とくっつきなよ」

「それは……」

 美織が口ごもった。
 蒼汰はショックだった。

 ……自分だけが知っていると思った美織。

 だけど、彼女には彼以外に色々な繋がりがあって、彼女の世界のようなものがあるのだ。
 引きこもって隔絶された場所で暮らす自分とは違って、取り巻く周囲が存在するのだと。
 勝手に仲が良くなったと思っていた美織と自分の間には大きな隔たりがあるのだと思い知らされたようで、胸の中が靄で覆われていくようだ。
 いてもたってもいられなくなって、駆け出したい衝動に駆られたが、足裏に力を入れて、なんとか踏みとどまる。

 その時――

「おい、お前たち何やってるんだよ?」

 これまた聞き覚えのある男性の声が聴こえてくる。
 ドクン。
 先ほど少女に出会った時以上に心臓がうるさくて敵わない。

(この声は……)

 頭の中に嫌な記憶が蘇ってくる。

『この間の事故、不運だった。あれさえなければ、この夏も来年も、お前はインターハイに行って、間違いなく活躍しただろう。だが、お前のその脚じゃあ、もう無理だ。ダメなんだよ』

 ドクンドクンドクン。
 死刑宣告にも似た宣言をされた際のイヤな記憶。
 先ほどまではじんわりと汗ばむほどだったのに、今となってはドッと汗が噴き出して、滝のように背を流れていく。
 案の上、少女たちが想像通りの名前を呼んだ。

「あ、山下先生!!」

「……こんにちは」

 快活な挨拶をしたのが美織。ツンツンした調子で挨拶したのが美織の友人の少女だ。

(こんなところで山下先生に出くわすなんて……)

 蒼汰は振り向いて相手の顔を見るのが怖かった。

「悪い、悪い、遅くなったな」

 山下先生が現れたと知るや、美織の友人の少女の頬がさっと朱に染まった。

「もう、いつも来るのが遅いんだから!」

 ツンツンした口調だが、山下先生の到来を心待ちにしていたのだと分かってしまう声音だった。
 若い生徒が教員に対して憧れを抱いているとか、そんなところだろうか?

「ほのか、珍しくお前が早く来すぎなんだって」

 山下先生の発言を聞いて、蒼汰に衝撃が走る。

(ほのかだって……?)

 美織の友人である少女の名前は、蒼汰の妹と同じほのかというらしい。
 蒼汰の心臓が大きく鳴った。

(それにしたって……)

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