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第3章 夏祭りの夜、輝く君とキスをする

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 美織が続ける。

「学くん、私はちゃんと約束している相手がいるの。誤解されるような真似はやめて」

 すると、学が口を開いた。

「美織が約束する相手なんて、ほのかさん当たりだろう?」

「ええっと……」

 ほのか。
 蒼汰は自分の妹と同じ名前が出てきたので、ピクリと反応した。
 珍しい名前ではないので、美織の友人に同じ名前の女子生徒がいたとしてもおかしくはないだろう。
 学はサラサラの髪をかき上げると、ちらりと斜め上を眺めた後にコクリと頷く。
 どうやら一人で何かに納得しているようだった。

「それなら邪魔するのも野暮だね。だったら僕は行くよ、それじゃあ」

 結局、学は蒼汰に挨拶することもなく踵を返す。
 色素の薄い髪がさらりと揺れる。そうして、こちらを一瞥することもなく去って行ったのだった。
 最後まで嫌味な態度を取られてしまい、蒼汰はムカムカしてしまう。

「ごめんね、あの子は、私の一個下の学年の昼空学ひるぞらまなぶくん。一応、転校してきてからずっと一緒の学校でね、いわゆる幼馴染ってやつなんだ」

「……そうかよ」

 蒼汰はとにかく腹が立って仕方がなかった。
 昼空学とかいうのに無視されたことも当然腹が立ったが、美織に他に親しい男性がいたことが、なんとなくショックだったのだ。

(くそ……)

 彼女を独占できているのは自分だけだという驕りのようなものがあったのかもしれない。
 気を取り直そうと思った蒼汰だったが……
 今度は二人の前に別の集団が現れた。

「美織、何やってるの?」

 少しだけ甲高い声がする。
 現れたのは、どことなく見たことのある少女だった。
 ツインテールに愛嬌のある顔立ち、キュッとしまった身体、すらりと伸びた手足。美織とは対照的に短めの丈のTシャツにホットパンツを履いていて快活な印象があった。
 ドクン。

(なんだ……?)

 心臓が早鐘のように脈打っていた。
 決して相手に異性としての魅力を感じたわけではない。

(なんで……?)

 蒼汰の全身が戦慄く。

(どうしてこんなにも母さんに顔が似ているんだよ?)

 現れた少女は死んだ母親の若い頃にそっくりだったのだ。
 どうしようもなく既視感を覚えて、血の気が引いていくのを感じた。
 動悸を落ち着けようと、Tシャツの裾をぎゅっと握る。
 少女が美織に対して語りかけた。

「美織、なんで一人でこんなところに来てるの? っていうか、学が近くにいたけど、あんたと一緒じゃないの?」

「え? ううん、昼空くんは今日は一緒じゃないよ」

 ――今日は。
 
 蒼汰の胸に美織の言葉が引っかかった。

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