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第3章 夏祭りの夜、輝く君とキスをする

12-1 待ちぼうけ

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 翌日の朝。
 蒼汰は、やけに目覚めがすっきりしていた。朝からシャワーを浴びると、張り切って部屋の中で夏祭りに向かう準備をする。
 部屋の中にある両開きのクローゼットを全開にすると、仕舞われていた数々のモノたちを外に出しては吟味していく。

「ええっと、確か、天体望遠鏡はこの辺りにあったわけだが……」

 この間崩した一角を整理しながら目当てのモノを探す。

「俺の記憶だと、こっちの段ボールに色々仕舞ってたはずで……」

 ちょうど視界の端に、はみだした衣服の袖が見つかった。

「あった、あった、この箱の中だな」

 高校生男子の蒼汰ならば両腕で軽々と抱えられるほどの大きさの段ボールを引っ張り出す。なぜか丁寧にガムテープで保護されていたのだが、それを取り除いて、箱の中を覗いた。

「これは小さい頃の水着で、ああ、こっちは子ども園の頃の制服か、中学時代の学ランもあるじゃんか、懐かしいな」

 ついつい過去の思い出に浸ってしまった。
 そうして、数枚の衣服を外に出した後に、ついに目当てのモノへと辿り着いた。

「これだ、あったあった!」

 蒼汰は他の衣服に隠れていたそれを引き出した。
 昔、夏祭りの時に着用した紺色の作務衣だ。
 虫が喰うなりヘタレたり、独特の香りが染みついてそうだと思ったが、そうではなかった。
 けれども、彼はすぐに眉を顰める。

「さすがに子どもの頃のものだから、小さすぎるな」

 自分の記憶の中では、着用した時にぶかぶかだった。
 だが、実際に探し当てた作務衣は子ども用なので入りそうにはなかった。無理に着れば破れてしまうに違いない。

「親父の大人用を借りるしかないか」

 蒼汰はぼやいた後、自室を出て、階段を降りる。
 まだ早朝だから、父親と妹のほのかは家の中にいるはずだ。

「おい、父さん、ほのか」

 珍しくリビングに向かって父親に声をかけようとしたが、二人ともいないようだ。
 蒼汰がすぐに踵を返すと、ちょうど玄関の扉から出ていく二人の姿を発見した。

(父さん)

 父親は庭の方に向かって声をかけていた。

「ほのか、帰ってきてからも、ちゃんと戸締りはしておけよ。今日も父さんは当直だから」

 どうやら、ほのかはもう先に外に出てしまっているようだった。

「お父さん、分かった!」

 以前に比べると、ほのかの声が大人びて感じた。もう小学校六年生になる。きっとあのぐらいの女子生徒というのは、男子生徒に比べると成長が早くて少々ませているし、しっかりしているのだろう。

「久しぶりに二人の声、まともに聞いたな」

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