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第2章 月の引力で君と惹かれ合う

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 すると、煌々とした光を目に宿したまま、彼女は続ける。

「私たちが見ている星はさ、実はもう何百年も前に消えてしまっているかもしれないでしょう? だけどさ、消滅してしまっても、綺麗な光を私たちに届けてくれる。消えても尚輝きを誰かに届けることができる。そんな存在になりたいなって思ったの」

 消えても尚輝きを誰かに届けることができる、星のような存在。

「たくさんの人たちじゃなくて良いんだ。私の大事な人たちにとって、そんな存在になれたら、すごく幸せなことだなって思ったんだ」

 自分の大事な人にとっての輝ける星。

 綺麗な表現だと、蒼汰は漠然と思った。
 そうして、美織が彼を見上げる。

「大事な人たちの星になるために、私には克服しないといけないことがあったの」

「克服しないといけないこと?」

「うん、私は海が怖くて、しばらく来れなかったって、言っていたでしょう?」

「そういやあ、そんなことを言っていたな」

 美織の瞳に映る光が、少しだけ揺れ動いた。

「私ね、ずっとずっと後悔していたことがあったの。海にまつわることで。そうしたら、君に会えた。死ぬ直前の私のために、神様が奇跡を与えてくれたんだって、そう思ったんだ」

 彼女の強い眼差しを受けて、蒼汰は息を呑んだ。
 以前から気になる発言を彼女は繰り返していた。
 思い切って尋ねてみることにする。

「お前は、ずっと俺のことを知っているみたいだったな。もしかして、昔どこかで会ってたり、するのか?」

 すると、美織の瞳から一粒の涙が零れて、風が攫っていった。

「うん、君は私のことを知らないと思う。だけど、小さい頃から、貴方はずっと私にとってのヒーローなんだよ。それは君がもう泳げなくなったんだとしても変わらない。そうだね、私のなりたい星みたいな存在、それが君なんだ」

 蒼汰の瞳が見開かれた後、まるで水面のように揺れ動いた。

 ……美織にとってのヒーロー。

 たとえ泳げなかったとしても……
 彼女にとっての輝ける星。

「俺がお前にとっての……星」

 目元と頬を朱に染めた美織がコクリと頷いた。
 ちょうど、その時――視界の端で何かが閃く。

「あ!」

 隣に座っていた美織が、突然空を見上げて声を上げる。
 つられて蒼汰も夜空を薄ぼんやりした空を眺めた。
 目の前を星が横切る。

「流れ星」
「流れ星」

 二人して声を上げた。
 まだ仄かに明るい夜空から海に向かって、流れ星が姿を落ちていった。
 そうして、続けて何個かの星が流れていく。

「今日は流星群が観れる日だったのか?」

 蒼汰がぼやいた。

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