満天の星の下、消えゆく君と恋をする

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第2章 月の引力で君と惹かれ合う

10-1 孤独だった2人

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 蒼汰は家を出ると、自転車に乗って図書館へと向かっていた。
 木々が立ち並ぶ道路上でタイヤを走らせていると、蝉の音が一際うるさく耳に届く。
 八月も半ばに差し掛かろうとしている。

「あいつ、大丈夫かな」

 あの後結局、昨晩は美織の家で一夜を共にしてしまった。
 もちろん男女の関係になったわけではなく、勿論健全な間柄のままだけれど。なんだか今までとは違う自分になってしまったような錯覚のようなものがあった。
 朝になって、なんとなく一夜を過ごしたことに対して罪悪感のようなものがあった。
 眠る彼女が目覚めるのを見届けた後、彼女の家を後にした。

『また今日も待ってるから』

 なぜだか頬を朱に染めた美織の顔を見ると、なぜだか蒼汰の顔も赤面してしまった。
 抱きしめた時の彼女の柔らかい感触が残っていて、それを思い出してしまって、どうしようもなく落ち着かなくさせた。
 実は美織が隣に眠っていたので一睡もできなかったので、早朝に帰宅してしばらく仮眠をとることにした。
 頭が興奮しているのか、二時間ほど眠ったら、ぱちりと目を覚ましてしまった。
 起きてからも美織の感触を思い出してしまう。
 まずい……雑念だらけだな。
 彼女の柔らかさに触れて幸せだった半面、昨晩の様子が気になった。

『せっかくだから調べてみるか』

 美織にはどういう疾患名なのか教えてもらっていた。

(脳神経系の病気……)

 調べ方が悪いのかもしれないが、インターネットで調べても、患者の闘病ブログのようなものばかりが出てきて、知りたい内容にはたどり着けなかった。
 疾患に関しては、医者をしている父に聞いた方が早い気もしたが、どうして調べているのかと根掘り葉掘り聞かれるのが嫌で止めることにした。
 父の書斎に入って医学書を見るのも、勝手に書物の配置が変わっていると指摘されても面倒だし、結局図書館に自分で足を運ぶことにした。
 図書館に到着して自転車を停めると、冷房の効いている建物の中へと入る。
 走ってきていて暑かったが、汗が一気に引いて、ひんやりとしてきた。
 医療のコーナーは図書館の中央当たりにあったはず。
 辿り着いてタイトルに目を通す。一般的な『家庭の医学』といったものから、解剖学の本、看護関係の教科書類、怪しげな民間療法の類まで様々な作品が並んでいた。中でも腰痛に関しての本が多い。
 パラパラと一般的な医学の本に目を通すが、どうも違う。
 脳・神経疾患という本に行き当たり、該当ページをめくった。

「脳・神経の疾患の……これか?」

 彼女の病気がどういう経過を辿るのかということまでは分からなかった。
 だが、簡単にどういう病気かについては分かった。

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