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第2章 月の引力で君と惹かれ合う
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しおりを挟むドクン。
心臓が大きく脈打った。
やはり予感は的中した。
そうだ。島の人間だったら、ほとんど誰もが知っているような内容なのだ。
期待の水泳選手・朝風蒼汰が故障して、選手生命が絶たれてしまったという事実。
引きこもりでもしない限り、好奇の目で晒されてしまうような、そんな閉ざされた島。
分かり切っていたけれど、それでもどうにかして逃れる場所が欲しかった。
あまりにも閉塞的な空間での暮らしなせいで息が詰まって、おかしくなりそうだ。
「うるせえな、お前に関係ないだろう?」
せっかく元の調子に戻そうとしたのに、先ほど以上に低い声が出てしまった。
けれども、自分自身の触れてはいけない部分に触れられたみたいで、感情を制御しようとしても、うまくできなかったのだ。
そばにいた美織の筋が強張ったのが伝わってきて、蒼汰は何度か深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせる。
「悪い、お前を脅かしたかったわけじゃないんだ」
ポツリポツリと声に出す。
「いいえ、私が急におかしなことを言ったから悪かったの」
「俺も悪い、自分でまだ処理できてないんだよ」
「ごめんね、気を悪くしちゃったんなら、デリカシーなさすぎた。人付き合いが下手で、やらかしちゃうんだ。本当にごめんなさい」
謝罪を繰り返していた美織だったが、意を決したかのように続ける。
「あのね、実はずっと昔から知っているの、あなたのこと」
思いがけない言葉を聞いて、蒼汰の全身に雷が討たれたかのような動揺が駆け抜けたのだった。
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