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第1章 満天の星の下、儚げな君と出会う

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 自転車を漕いでしばらく走る。もうすっかり夜空には星々が顔を覗かせていた。
 浜辺に到着する。海独特の香りを感じながら、砂浜を踏みしだく。
 そうして、昨晩、あの美少女・夜海美織と出会った場所へと到着した。

「さすがに連日姿を現わすわけないか」

 やはり胸のどこかで期待していたのかもしれない。少しだけ残念な気持ちを味わいながら、望遠鏡の脚立を開いて砂の上でなんとか立たせる。レンズを覗き込んで星々を探す。

「月って、こんなに綺麗だったんだな」

 蒼汰はしばらく月を眺めた後に望遠鏡から離れると、星空を見上げた。
 なんとなく昨日見える風景と同じようで違う気がする。
 毎日の星座の移り変わりを観察して過ごせば、今までとは違う自分に生まれ変われそうだと漠然と思った。

「星だって毎日動いているんだ。自分もなんとかして動かないといけないな」

 そんな風に未来のことに意識を移すと、途端に居心地の悪さを感じた。
 考えれば考えるほど身体が重くて仕方がない。
 なんだか立っていられなくて、そっと砂の上に寝そべった。
 砂のザラザラした感触と頬を嬲る生ぬるい風を感じていると、なんとなく心地よくなってくる。
 このまま夜空を眺めながら、眠りに就いてしまいたい衝動に駆られてきた。

「ああ、それにしたって綺麗だな」

 ちょうど、その時――

「良かった、今日もいた!」

 突然、高い声が耳に届いてきて、蒼汰の身体がびくりと跳ね上がった。
 振り向くと、そこには昨日見た美少女・美織の姿があったのだ。

「なんだ、どう……して……?」

 蒼汰は思わずうなり声をあげてしまった。
 夢か何かの類だと思おうとしていたが、やはり生きた人間だったのか。

「今日も君がもしかしているのかなって思って……そしたら本当にいたから驚いちゃった」

 美織が首を傾げながら、零れんばかりの笑顔を向けてくる。見た人全てを魅了しそうな表情だ。愛らしい頬にはえくぼができていた。
 蒼汰は、彼女が自分に向かって嬉しそうに微笑んできているのだと意識したら、心臓がドキドキ高鳴って落ち着かなくなっていく。平常心でいたいのに、そわそわと何度も掌を履いているジーンズで拭った。
 潮風が吹く。美織の艶やかな黒髪が揺れ動くと、月の光を反射した。華奢な体には白いワンピースをまとっており、手には幅広の麦わら帽子を手にしていた。夏だというのに儚いぐらいに白い肌をした彼女は、やはり生きている人間ではない気がしてくる。
 ふと、彼女が天体望遠鏡のレンズを覗いた。

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