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第1章 満天の星の下、儚げな君と出会う

3-1 美少女との出会い

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 蒼汰の天体観測の時間に現れた一人の美少女。
 彼女は少しだけ唇を戦慄かせた後、なぜかこちらに向かって謝罪してきた。

「ごめんなさい。まさかとは思っていなくて」

 彼女は瞳に浮かんだ涙を拭うと、ふふっと口元を綻ばせた。
 天使か何かが微笑んでいるのだろうかと錯覚しそうだった。

(落ち着け)

 蒼汰は高鳴る心臓を落ち着けようとする。

(こんなに緊張するなんて、競技前でもあるまいし)

 そもそも、こんな美少女に対して詫びを入れられるような覚えなどない。
 目を覚ましているとは思わなかったと言っているぐらいだし、もしかして浜辺で寝そべっていたから、何かあって倒れていると思って心配して見に来てくれたのだろうか?

「ああ、いや、そんなに気にしてはいないんで」

 蒼汰は手に持ったままだった麦わら帽子を相手に返した。
 それにしたって、こんな美少女が島にいただろうか?
 彼が考え込んでいると、彼女が甲高い声を上げた。

「あ! 君、天体望遠鏡、持ってきてるんだ!」

 美少女は、先ほどまでの儚げな印象とは打って変わって、まるで子どものように目を爛々とさせた。そうして、蒼汰が砂浜の上に設置した天体望遠鏡へと近づいてきたかと思いきや、接眼レンズを覗いた。

「あれ? この望遠鏡、何も観えないね」

 彼女が不思議そうな声を上げたものだから、蒼汰は何げなく返す。

「ああ、さっきから真っ暗で何も観えないんだよ。不良品か、何年も放置してたから、観えないんだろうさ」

「放置してたの?」

「ああ」

「う~ん、そうだ、じゃあ、私に任せてみて」

 美少女が快活に微笑んだかと思うと、望遠鏡の観察をはじめた。

「ええっと、対物レンズは凹面鏡じゃなくて凸レンズで、接眼レンズは凸レンズ。だとしたら、ケプラー式じゃなくて、ガリレオ式か」

 突然かなりマニアックなことを少女が語り始めたため、蒼汰は面食らってしまった。

(なんだ、この女……?)

 儚い雰囲気の美少女だと思ったのだが……

(俺の勘違いだったのか?)

 そんな蒼汰の気持ちを知ってか知らずか、彼女は三脚の周囲をくるくると回った後、望遠鏡の接眼レンズを今度はくるくると回しはじめた。

「わかりやすく照準は月に合わせることにして、接眼レンズのユニットを回してピントを調整して、っと。はい、覗いてみて」

 望遠鏡に何かを施した彼女は、嬉々とした表情を蒼汰へと向けてきた。 

「いいからほら、来て来て」

 くるりと蒼汰の背後に回った彼女が、彼の背を両手で押した。

「待てって、覗くから」

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