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第1章 満天の星の下、儚げな君と出会う
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しおりを挟むそうして、冷房がガンガンに効いていた図書館の自動扉を抜けて外に出る。太陽があまりにも眩しくて咄嗟に目を瞑ると同時に、むわりと熱気に包み込まれた。
玄関のすぐそばに立つ大木から、蝉の大音声が奏でられていて、なんだか無性に居心地が悪くて、そそくさと目当ての場所へと急いだ。
駐輪場に停めていた自転車に跨り、ペダルをゆっくりと漕ぎ始める。脚は使える。競泳は無理でも競輪選手ならば行けるのではないかと安直な考えが浮かんではくるものの、気分を高揚させる考えでもなかったし、本気で目指している人物たちへの冒涜のようにも思えて、すぐにその考えを打ち消した。
図書館の敷地内を覆っていた木々を抜けると、先ほど以上に強い日差しがじりじりと肌を焦がしてくる。
とにかく暑い夏だ。
(こんな時こそ、プールや海で泳げたなら、どれだけ幸せだっただろうな)
去年までは山下先生や親友の恭平と楽しく部活に励んでいて、先輩たちからは部を任せたと託されたばかりで、後輩たちに生き生きと指導をおこなっていたというのに……
思い出すと胸がギシギシと軋んでいくようだ。
とにかく水泳絡みのことを思い出さないようにしているのに、自分自身の人生は水泳で始まり水泳に終わっていた と言っても過言ではないぐらい、水泳なしでは自分というアイデンティティそのものが揺らいでしまいそうなぐらい、常に傍にいて、一心同体のような存在だったのに。
「ダメだ、考えるな、考えちゃだめだ」
けれども、考えないようにすればするほど、水泳のことで頭がいっぱいになっていく。
水泳なしの自分。
そんな自分を受け入れることさえ難しい。
これから先、どうして行けば良いのか、路頭に迷ってしまった。
「とにかく他に何か気を紛わせるものを……」
図書館から家に帰るまでの道には、ちょうど地元の海水浴場がある。
エメラルドグリーンの水面に光がキラキラと反射してきて目に染みた。
地元の人間たちだけでなく、夏だけはこの浜辺に多くの人々が集まってくる。今年の夏もそれは変わらず、他の街からの旅行者だろうか、家族連れの観光客や大学生のサークル旅行者たちにサーファーたちなど多彩な顔触れが集まっていた。
物心ついた頃から、この海で遊ぶのが大好きだった。
けれども、今の蒼汰には毒でしかなかった。
打ち寄せる潮の前ではしゃぐ人々を見ても鬱屈な気持ちが募るだけだった。
(昼間にここを通るのはもう止めよう)
そう心に誓って、海から目を逸らし、アスファルトだけをまっすぐに見据えて、重たい足でなんとか前へ進んだのだった。
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