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第1章 満天の星の下、儚げな君と出会う

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 それが原因で全治数か月の怪我を負ってしまった。しかも運悪く、肩の腱を断裂してしまい、手術後にリハビリに励んだものの、元のようには動かせなくなってしまっていた。
 思い出しただけでも悔しさで胸が重苦しくなってくる。
 蒼汰は以前よりも握力の落ちた拳をぎゅっと握りしめた。
 山下先生が淡々と告げる。

「あれさえなければ、この夏も来年も、お前はインターハイに行って、間違いなく活躍しただろう。だが、お前のその肩の怪我じゃあ、もう無理だ。ダメなんだよ」

 無理。
 ダメ。
 否定的な言葉が鋭い刃となって刺さってくるだけでなく、繰り返された結果、胸に重しのように圧し掛かってくる。

 ――無理なんかじゃない。

 そう反論したかったけれど、もうきっと水泳で活躍できないことは自分自身がよく理解していた。
 けれども、どこかで誰かに「大丈夫」だよと否定してもらいたかったのも事実だ。
 山下先生が言葉で追撃をしかけてくる。

「お前はさ、頭が良い。狭い島だから成績トップなわけじゃあない。お前はずば抜けて賢い子だった」

 彼はどこか懐かしむように告げた。

「大島高校には高校は一つしかないから、頭の良い奴も悪い奴も一緒に通ってるわけだが……お前の場合は、全国模試の成績だって大概良いだろう。もう水泳なんて忘れて勉強しろ。父親と同じように本土の医学部に行け。話はこれで終わりだ」

 相手の言葉に衝撃を受けすぎて、頭が真っ白になって、その後、どうやって学校から家に帰ったのか記憶がないのだった。



***



 それから蒼汰の過ごす毎日は、地獄のような日々だった。
 海の中、足を取られて溺れてしまい、必死にあがいてもがいても這い上がれない時のようでもあった。
 子どもの頃、実際に海で溺れたことがある。
 あの時は、近くに引率に来ていた山下先生が、幼い蒼汰の手を引っ張って助けてくれた。
 けれども、大人になった今、彼から手を離されてしまい、寄る辺もなく一人で海の渦にでも飲まれてしまったかのようでもある。

(これからどう生きていけば良い?)

 憧れの恩師でもある山下先生の言う通り、残りの高校生活を勉学に励んで生きていけば良いのだろうか。
 けれども、なんとなくそれは違う気がした。
 本来はあったはずの幸せが跡形もなく消えてしまったかのようで、これから先をどう生きていけば良いのか分からない。

(とりあえず、これからどうしたら良いか考えるしかないの分かっているが……)

 焦燥だけがどんどん募っていく。
 荒ぶる気持ちを必死に抑えつけながら生きていたら、だんだんと学校に通う足が遠のき、気付いたら一年の月日が経とうとしていた。


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