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第2話 姫、鬼に喰われる――橋姫――ごはん

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「なんだ、人間界では姫のくせに、お前は料理をするのか?」

 不思議そうに鬼童丸は視線を送ってきていた。

「ええ、姫だなんだとは言ってられませんでしたので……鬼の世界がどうかは存じ上げませんが、姫と言っても、一貴族の娘でしかありません。殿方に捨てられてしまえば、悲惨な末路が待っている女も多い世です」

 ふと、優しい母の姿を思い出す。
 「父を愛している。信じてあげてほしい」と、まるで生娘のように話していた。
 自分から、無理に再婚しなくても良いと伝えたが、反面、心の片隅では、母のように男に依存しても苦しい生活を送り続けるだけだと、漠然と思うこともあった。

「それならば、自分で活路を見出した方が良いなと思ったまでです。周囲からは変わり者だとは思われてはおりましたが……」

「そうか……」

 鬼童丸が愉快気にあやめを見ていた。
 
「ちょうど一刻ほど経っていますね。米をザルに上げて水気を切って……、鍋に移します。お水をだいたい米と同じ量かちょっと多いぐらい……浸るぐらい入れて……沸騰させたら、火を弱くして水気がなくなるまで火を通します」

 橋が料紙りょうしに筆で書きつけていた。
 鬼童丸は退屈になったのか、近くでうつらうつらしている。

「お水がなくなったら、炊いた時間とおなじぐらいの時間、蒸して……と、完成です!!」

 あやめは額の汗をぬぐう。
 鍋の中には、ふっくらほかほか炊き立ての白ご飯が完成していた。

「盛りつけるのに時間がかかるから、せっかくだから、おにぎりにしましょうか」

 そうして、握り飯を作って、鬼達に配る。
 鬼童丸があやめに近付いた。

「俺にもくれよ」

「はい、どうぞ。出来立てほやほやですよ」

 大きな口を開けて、鬼童丸がおにぎりを口いっぱいに頬張った。
 一口、二口、食べた頃には、紅い瞳が爛爛と炎のように輝いている。

「中までしっとりしていて旨いな……やみつきになりそうだ……!」

「まあ、ありがとうございます……! 私も食べますね!」

 皆で一緒におにぎりを食べる。
 ほかほか、なんだか胸がいっぱいになってくる。

「皆、幸せそうで、嬉しい限りです……!」

 うっとりするあやめを鬼童丸はじっと見つめた。
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