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第2話 姫、鬼に喰われる――橋姫――ごはん

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 あやめの椀を持つ手がぶるぶると震える。
 彼女の眼の前には、一応、一般的な貴族の食事が披露されていた。
 四角い台盤だいばんは、漆塗りうるしぬり蒔絵まきえが描かれて、とても豪奢なものだ。
 その上に、高く盛った強飯こわいい、カブのあつもの(汁物)、野菜の醤漬けひしおづけが三種、調味料の入った四種器よぐさものが並んでいた。


「ぜんっぜんっ……お食事が美味しくない……!」


「ああ?」


 椀に入った白米に目をやり、彼女は衝撃を受けていた。

「これは……強飯こわいいというよりも、ただのお米……! ぬか臭いし、水を全然含む前に炊いてしまった感じが凄まじい……! ご飯と言ったら、お口の中でふんわりするのが魅力なのに、まさかこんなにガリっガリのご飯を食べることになるなんて……!」

 あやめは、きっと鬼童丸を睨んだ。

「作り直しです!! 台盤所だいばんどころのある雑舎ぞうしゃに私を連れてくださいませ!」

 圧倒された鬼童丸は「おう……」とだけ頷いたのだった。


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