憂鬱な妖精との恋~南の島の寄宿学校にて〜

tommynya

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君の絵を描かきたい

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選択授業が始まった。ルームメイトと一緒に行動しなくてはならないので、部屋に戻りミカに相談した。

「俺は絵画を選択したい。ミカは?」

「いいよ。僕も絵画がいいから」

「ミカも絵画を学びに来たんだね。だから同じ部屋なのか」

「うん。みんなルームメイトとは同じ選択授業みたい」

「ミカは人物を描く?風景?」

「どっちも描く」

(お願いしてみようかな…変に思われたら怖いけど…)

「俺…ミカを描いてみたいんだけどモデルやってくれない?凄く綺麗だから描いてみたいんだ」

「それじゃ、僕も君を描くよ」

「あっルイって呼んでよ」

「うん。ルイ…」

「ありがとう。描かせてくれて。せっかくだからビーチで描く?」

「暑いけど、日陰探そうか」

「うん」

2人でスケッチブックを持ち、ビーチのカフェのテラスで描く事にした。屋根もあるので日除対策もバッチリだ。

「ここ気持ちいーね。景色も良いし気に入った」

「俺も気に入った。来て良かった。早速デッサンしようか」

「うん」

2人で向かい合って座り、書き合う事にした。俺はミカが描きたくてたまらなかったので嬉しさが溢れていた。

「本当にミカは綺麗だね。こんな綺麗な人描いた事無くて本当嬉しいよ」

「ハハッ、何?口説いているの?大袈裟なんだよルイは」

「あっごめん…変な事言って気を悪くしないで…」

(白くて長い首、綺麗な輪郭、赤くて艶やかな唇、長いまつ毛、色素の薄い肌、明るい瞳の色、全て一級品過ぎる…細くて白い手首、細いウエスト…もやばい…)

「普通でしょ。ルイもイケメンじゃん」

「俺は本当普通だから…ミカはやっぱり純粋な日本人ではないよね?日本では見た事ない美しさだから」

「うん。父は日本人だけど、母はフランスの血が入っていたみたい。もう死んじゃったんだけどね…」

「ごめん…」

「大丈夫。僕が小さい時に亡くなったから全然覚えてないし、今は父が再婚したから新しい母もいるしね」

「そうなんだ。兄弟はいる?」

「うん。兄がいる。血は繋がってないけど…」

「俺は一人っ子だから兄弟いるの羨ましいな。一緒に遊べたりするのかなぁと思って」

「…うん。1人の方が気楽で良いよ」

「…そうなんだね。なんかごめんね、色々聞いちゃって」

「…ルイは気を使う事はないよ。同じ学年で同じ学科だから一年間宜しく。同室だしね」

「うん。宜しく。困った事があったら何でも話して」

「うん。ありがとう」

おしゃべりしながらデッサンしていたら、お昼休憩の鐘が鳴った。

「もうお昼か。ランチ行こうか」

「うん」

⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ 

食堂に戻り、二人で食事を摂っていると知らない学生が近づいてきた。

「ミカ、今夜は俺の部屋来いよ」

「はい。分かりました」

「じゃあな」

そう言うと男は去っていった。年上に見えたので20歳位か。少し嫌な感じがした…

「あの人は知り合い?」

「うん。兄の友達」

「へーお兄さんも来ているの?」

「兄は来てない」

「あの人と一緒に来たの?」

「ううん。偶然会っちゃったんだよね…」

少しミカの表情が曇った気がして、この話はこれで辞めた。

「ミカは、絵はいつから始めたの?俺は高校に入ってから好きになったんだ」

「僕は最近だな。家を出たくてここに来た、みたいな不純な動機だから…絵はあまり上手くないと思う」

「へーそうなんだね…でも、一年間ここで描き続けたらきっと絵の楽しさ見つかるよ。俺ももっと絵を描くことが楽しくなって、将来の夢が出来る事を期待しているんだ」

「ルイはキラキラしているね今。瞳が輝いた。羨ましいな…」

「ヘヘッ、そうかな。なんか恥ずかしい。キラキラしているなんて」

「お疲れ~」

龍と日向がやってきた。

「二人は何していたの?」

「ビーチでお互いのデッサンしていた」

「俺らは現代アートの授業受けているよ」

「へー面白そう。俺らも明日受けてみようよ。ミカ」

「うん」

「ルイとミカ仲良くなっているじゃん!昨日は全然仲良くなかったのに!」

「うん。今日は仲良くしてくれている。フフッ」

「もぅ。僕がなんか不機嫌な子供みたいじゃん。昨日は色々あって機嫌悪くてごめん…」

「大丈夫。気分が悪い時はだれでもあるから、気にするなよ」

「龍かっこいい~」

「はいはい。日向飯取りに行くぞ。じゃあねルイとミカ」

「夜にまた会おう」

⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ ⋆ 

午後も引き続きデッサンの続きをした。

「ねぇ、さっき会ったお兄さんのお友達と仲良いの?」

「えっ何で?別に仲良いってわけでもないけど、知り合いってだけで…」

「まさか、虐められたりしてないよね?さっき様子がおかしかったから…」

「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう。僕は大丈夫だから…」

「ここで会ったのも偶然って言っていたけど、何か変だなあって思っちゃった」

「うん。僕もびっくりしたよ。ここで知り合いに会うとは思わなかったもん。船で会った時はびっくりしたし…」

「向こうが、ミカがここに来る事知っていたら、ちょっと怖いね。偶然だといいんだけど。ちょっとあの人の目つき怖かったから」

「ハハッ、それはさすがにないと思う。まさかね…」

おしゃべりしながらデッサンは進み、ある程度はできたので作業室に移動して、絵の具で色付けを始めた。先生にもアドバイスを貰って作業は続く。

「ミカの絵、今まで描いた人物画の中でも1番良く描けていると思う。やっぱりモデルが良いと違うな~」

「ハハッ、何言ってんの。ルイのスキルが上がったんでしょ」

「ヘヘッ、描いてて本当楽しくてミカのおかげだ。ありがとう。ここにいる間、またモデル頼んでいい?」

「うん。勝手に描けよ好きなだけ。フフッ」

「やったね!ありがとう。いっぱい描かせてもらうよ」
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