約束ノート

村上未来

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 もう弱音を吐かない。
 霞は鏡に映る自分を見詰め、心の中でそう呟いた。
 静かに頷いた霞は、ドライヤーを手に取り、髪を乾かし始める。手早く髪を乾かした。鏡に映るのは、悲しみの主人公ではなくなっていた。
 霞は必要最低限の物を鞄に詰め込むと、玄関のドアを開けた。

「…あっ、お待たせしました」

 車の中ではなく、玄関から少し離れたアパートの廊下で待っていた健太と田宮を見て、霞はおもわず頭を下げた。

「いえ…では参りましょう」

 田宮は健太と霞を連れ、アパートの裏の道に居る利根川と合流し、車に乗り込んだ。

「…これからの事を話し合いましょう」

 利根川の運転する車の中で、田宮はそう話を切り出した。

「…まずは、篠原さんの家に向かいます…篠原さん構いませんか?」

「はい」

 後部座席に座る健太は、助手席の田宮に向かい返事をした。

「…約束ノートには、篠原さんが五日以内に山方太一さんを殺す事を約束すると書いてありました…期限はあと三日。この三日間で犯人を突き止めなけば」

 田宮はそこで言葉を止めた。
 言葉の続きを聞かなくとも、健太には田宮が言わんとしている事が分かった。家族の死。健太の脳裏に、その言葉が刻まれた。

「…時間がありません…二手に別れて捜査しても構いませんか?」

 田宮は前を向いたまま、健太と霞に問い掛けた。

「俺は構いません…」

 健太は返事をすると、横に座る霞に視線を向けた。
 健太と視線を合わせた霞が、静かに頷いた。

「私も構いません」

「…では、私と篠原さん。新垣さんは利根川と組んでください…利根川は柔道と銃の腕に長けてます。私より腕が立ちますよ」

 田宮は、霞に対する健太の不安を少しでも和らげようと、そう言ったのだろう。

「分かりました…具体的には何をすればいいのですか?」

「第一優先は、ご家族の居所を掴む事です。…新垣さんのダウジングの能力が復活したら」

「…すいません…さっきダウジングしてみたのですが…出来ませんでした」

 霞は田宮の言葉を遮り、頭を下げた。
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