約束ノート

自分

5

「おい！死んだからって、罪がなくなる訳じゃないぞ！死ぬなんてよせ！」

　健太は考えるよりも先に言葉が出てきた。

「そうだね…でも、僕にはこれしか方法がないんだ」

　小羽は振り返る事無く、歩きだした。
　健太は小羽の背中に語り掛けた。

「お前が悪い訳じゃない！お前の中のもう一人が全てやった事なんだろ？」

「…健太君なら、そう言ってくれると思ってた…ありがとう…霞ちゃんを…幸せにしてあげてね」

　ドアに辿り着いた小羽は、顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら、部屋を出て行った。

「おい！止めろ！」

　建太の叫び声だけが、虚しく部屋の中に響いた。
　健太だけになった。小羽が出て行ったドアは閉まっている。そのドアを見詰めていた健太は、視線を変えた。どこを見るでもなく、視線はあちこちに向いている。
　建太は一人部屋の中で様々な事を考えた。家族の事。遥の事。和也の事。
　悲しみの中、建太は決意した。必ず犯人を見つけ出す。


　時間が経った。

「…ガチャ」

　部屋のドアが静かに開いた。
　建太は力強い眼差しで、部屋に入って来た人物を見詰める。それは制服を着た男の警官だった。

「ど、どうしたんですか！？」

　警官は椅子に拘束されている建太を見付け、慌てて駆け寄った。

「…何処かで人が死んでいると思います…見付けてあげて下さい」

　健太は最後に見せた、男らしい顔付きの小羽を思い浮かべた。
　警官は顔色を変えた。

「えっ！…あなたのお名前は？」

「篠原健太です…川北署の利根川さんと日村さんという刑事さんを呼んでください」