約束ノート

村上未来

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連続する狂気

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「…はい」

 健太は虚ろな目を田宮に向けた。だが、その瞳の奥は力強いものがある。

「利根川と日村も一緒に来てくれ」

 四人は田宮を先頭に、用意した部屋に向かった。
 部屋の椅子に腰掛けると、田宮は一枚の写真を健太に手渡した。

「この人物に見覚えありませんか?」

 写真の中には、笑顔で写る一人の青年の姿があった。

「…いえ、見た事ないです」

 健太には見覚えがなかった。

「その人物は、速水小羽という二十五歳の男性です。心当たりありませんか?」

 田宮は手帳を開き、書き込まれた情報を読み上げた。

「…速水小羽…いえ、聞いた事もないです…この人がどうかしたんですか?」

 健太は写真を見詰めながら問い掛けた。

「半年前、史乃原剣太さんという男性が殺されました」

「えっ!?…しのはらけんたって」

 健太は写真から田宮に視線を変えた。その目は驚きに満ちている。

「…篠原さんとは漢字が違うのですが、読み方は篠原さんと全く一緒です」

「…その篠原さんと、俺が何か関係あるんですか?」

 健太は息を飲んだ。そして、田宮の答えを待った。

「…速水小羽は探偵を使って、複数のしのはらけんたという名の人物を探していました…その中に殺された史乃原剣太さんと、あなたが含まれています」

 健太は目を見開いた。そして、沈黙した。

「…ふぅ」

 何かを考えるように黙っていた健太が、深い息を吐いた。

「速水は史乃原剣太さん殺害容疑が掛けられています…ここ五年で、しのはらけんたと読む名前の男性が五人も殺されています…全てがそうかは分かりませんが、警察は速水の犯行と見て、捜査を始めました」

 田宮は言い終えると、健太を見詰めた。その瞳はどこか哀れんでいるようだ。
 黙っていた健太が口を開いた。

「…何故、俺と同じ名前の人が次々と殺されているんですか?」

「速水は十歳の時にも篠原謙太という少年を殺しています」

「…十歳の時に」

 健太の脳裏に、霞が話してくれた、約束ノートに縛られた一人の少年の影が浮かんだ。

「…速水は約束ノートに心を支配されているんでしょう」

 田宮が言った。

「…約束ノート」

 呟く健太の頭に、霞の姿が浮かんだ。そして、確信した。霞が話してくれた少年が、速水小羽だという事を。

「十歳の時、速水には好意を抱く少女がいました。しかしその少女から、自分には運命の人が居ると聞かされたようです。…速水は無意識に約束ノートに書いたそうです。少女と結婚する為に、運命の人であるしのはらけんたを殺すと」
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