約束ノート

村上未来

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虚ろ

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「…書いた約束を絶対に守らなきゃいけないノート…純粋なその子は、それを忠実に守ったの…ううん…純粋だったせいだけじゃない、まだ幼いのに虐待されて、約束を守るように洗脳されたの」

「…それって」

 健太は驚きの表情で尋ねた。

「…約束ノート」

 霞は包み込んだ健太の手を、優しく握り締めた。

「約束ノート…」

 健太は自分と同じ約束ノートに翻弄された一人の少年を哀れんだ。


 警察署に戻った佐瀬と勝又は、取調室に来ていた。目の前には、沢尻が座っている。佐瀬は、不貞不貞しい態度の沢尻を睨み付けている。

「…なんで新垣さんが共犯だって嘘を吐いた?」

「えっ?嘘なんて吐いてません。神の言葉を聞いて、あの女と一緒に田島遥を殺害したんです」

 沢尻は口から涎を垂らし、笑顔を浮かべている。それが演技なのか、佐瀬はまだ見抜けなかった。

「神の言葉だかなんだか知らないが、嘘を吐くな!裏は取れてるんだ!」

 佐瀬は大声を上げた。
 沢尻は雷に怯える子供のように頭を抱えた。

「すいません、嘘です。申し訳なく思います。良心が痛みます」

 沢尻は頭を抱えたまま、楽しげに言った。

「ふざけるな!痛む良心なんかお前にあるか!」

 佐瀬はテーブルを叩き付け、怒りを露わにしている。

「良心が痛むというのは嘘です。嘘を吐いて、良心が痛みます」

 顔を上げた沢尻は、にんまりと笑った。

「お前!」

 佐瀬はテーブルに身を乗り出し、沢尻の服の襟を掴んだ。

「佐瀬さん!」

 後ろに立っている勝又が、佐瀬の腕を掴んで止めた。
 襟から手を離した佐瀬が、椅子に座った。

「…田島遥さんを殺したのは間違いないんだな」

「はい、殺しました。楽しかったです」

 沢尻は楽しげだ

「くっ!」

 佐瀬は拳を握り締め、沢尻を睨み付けた。

「…お前は、間違いなく刑務所に送ってやるからな…精神鑑定に逃げられると思うなよ」

 佐瀬はそう言い残し、勝又と共に取調室から出た。
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