約束ノート

西園寺瑠奈

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　瑠奈は元から華奢な体つきだ。その為、服を着れば女に近い体つきではあった。しかし、女と比べれば筋肉質だ。その体つきが変わった。二の腕や胸に脂肪が付いてきた。瑠奈は毎日裸で鏡の前に立ち、嬉しそうに自分の体を見詰めていた。
　瑠奈は二十一歳になった。変わりなく俊也と幸せに暮らしている。いや、変わった事がある。瑠奈は二十歳の時に、性適合手術を受けている。見た目でも女の体になったのだ。
　戸籍上でも女になった。名を雅史から瑠奈へと変えた。西園寺瑠奈。それが今の名前だ。
　瑠奈は女になれた喜びで涙を流した。これで大好きな俊也といつでも結婚できるのだ。
　瑠奈の中にあった狂気は完全に消えている。治療により女になった事で、消えたのかは定かではないが、瑠奈は心優しい人物になっていた。
　俊也は変わらず優しかった。瑠奈の毎日は、幸せに満ちている。
　それから一年。
　瑠奈の二十二歳の誕生日。それは瑠奈にとって、忘れられない誕生日となった。
　その日、俊也と瑠奈はデートをしていた。買い物をした後、高級レストランで食事をし、夜の海を見に海岸に行った。
　こんなデートは初めてだ。俊也は普段、安い定食屋や居酒屋にしか瑠奈を連れて行かなかった。別にケチという訳ではない。高いものより、安くて美味いものを探すのが好きなのだそうだ。それを瑠奈も理解している。
　特別な日に特別なデート。買い物をし、高級レストランで食事。そして、今は夜の海を見ている。こんなシチュエーションを瑠奈は知っていた。何かで見た映画だ。その映画の中で、男は女にプロポーズをしていた。偶然にも、女は二十二歳の誕生日。瑠奈は意識した。

「…綺麗だね」

　水平線に浮かぶ光を放つ船を見詰め、瑠奈は素直にそう思った。

「あぁ、綺麗だね」

「…今日はありがとうね…素敵な誕生日になったよ」

　瑠奈は照れた表情を浮かべ、俊也の頬にキスをした。
　俊也は瑠奈を抱き締めた。そして、瑠奈の唇に自分の唇を重ねた。

「瑠奈…プレゼントがあるんだ」

　顔を離した俊也は、上着のポケットから小型の箱を取り出した。そしてその箱を開け、瑠奈の前に差し出した。