約束ノート

村上未来

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「えぇ、言いましたよ」

 それが何か?そんな言葉が聞こえてきそうだ。雅史は先程よりも淡々とした喋り方になっている。

「何で殺しあわなければならなかったの?」

「山岸さんは自分の恋を邪魔する奴は殺すって言ってましたよ。だから、青木先生も篠沢さんも殺されたんでしょ」

「他人事みたいな言い方ね」

 我慢しきれなかったようだ。相田の後ろに立ったまま黙っていた彩花が口を開いた。

「他人事ではないですよ」

 じろりとした瞳で、雅史は彩花を見詰めた。

「何で、自分の彼女をさん付けで呼んでるの?」

 彩花はそれも気に入らないようだ。

「別に意味はないんですけどね。気に触りましたか?」

 雅史は挑発しているつもりはないが、言われた本人はそうは思わなかったようだ。

「意味はない?変じゃない、彼女を苗字で呼ぶなんて?」

「そうですかね?」

「悲しんでるなら、苗字でなんて呼ばないわよ」

「へぇー、そうなんですね。じゃあ、下の名前で呼びますね」

 雅史は挑発ではなく、素でそう答えた。
 彩花の顔にみるみる怒りが籠ってきた。冷静でなければ、嘘は見抜けない。それを知っている相田は、二人の会話を断ち切る為に口を開いた。

「君は事件に関与してないの?」

 じろりとした雅史の瞳が、相田を見詰めた。

「青木先生に監禁されていたし、脅されましたから、関与はしてますよ」

 何を聞いているんだ?雅史の顔は、そう言いたげだ。

「自分の意思で山岸さんを呼び出してはいない?」

 相田は核心を付いた質問をした。

「聞いてなかったんですか?青木先生に脅されて電話で呼び出したって言いましたよ」

 記憶力ないのか?雅史の顔は、そう言いたげだ。

「本当に?」

 相田は挑発するように言った。

「本当ですよ」

 雅史は怒らなかった。どのような心境なのかは分からないが、雅史は冷静に答えた。
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