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幕引き
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相田は雅史を見詰めた。そこには、先程まで怯えていた少年の姿はない。雅史は薄ら笑っているようにも見えるし、悲しんでいるようにも見える。
相田は雅史を注意深く見詰めながら問い掛けた。
「…平田亜由美さんはどうやって殺されたの?」
「俺が青木先生の部屋で縛られて監禁されていたら、青木先生が連れてきたんですよ」
雅史は淡々と語りながら、相田の目を見詰めている。
心理が読めない。今まで携わってきた人間の中に、こんな相手はいなかった。
相田は質問を続けた。
「…平田亜由美さんを生きたままで連れてきたの?」
「そうです…そして、俺の目の前で、青木先生が平田さんの首をロープで絞めました…平田さんは俺の腕を掴み、とても苦しそうでした」
雅史の淡々とした口調は変わらなかった。
「…平田亜由美さんが殺された時、君は怖かった?」
相田は淡々と答える雅史に、不信感を募らせた。
「怖かったです」
そうは見えないが、雅史はそう答えた。
ドアが開いた。戻ってきた彩花が、相田の耳元で囁いた。
「既に捜査員が、青木の自宅に向かっている最中でした」
「分かった」
相田は雅史から視線を外さないまま、小さく頷いた。
「…山岸裕美さんとはどんな関係?」
相田は話を続けた。
「彼女ではないですが、俺に好意があったみたいですね。それより、山岸さんが言ってましたよ。誰か殺したって…恐らく俺の交際相手の一人だと思うんだけどな」
淡々と語る雅史の言葉は、他人事のように聞こえる。
「…篠沢理奈」
彩花が呟いた。
「えっ?」
雅史は相田の後ろに立つ彩花を見詰めた。
「篠沢理奈さんが誰かに殺されたの」
彩花は雅史を睨み付けた。
「篠沢さん、殺されたんだ」
雅史は驚いた様子を見せなかった。
「えぇ…あなたの彼女が、また殺されたの」
「そうですね」
雅史の口角が上がったように見えた。
「悲しくないの?」
彩花は憎しみの籠もった瞳で雅史を睨み付けた。
「悲しいですよ。彼女ですから」
雅史の目からは涙が流れ落ちる気配はない。相田も嫌悪感を含む瞳で雅史を見詰めた。
相田は雅史を注意深く見詰めながら問い掛けた。
「…平田亜由美さんはどうやって殺されたの?」
「俺が青木先生の部屋で縛られて監禁されていたら、青木先生が連れてきたんですよ」
雅史は淡々と語りながら、相田の目を見詰めている。
心理が読めない。今まで携わってきた人間の中に、こんな相手はいなかった。
相田は質問を続けた。
「…平田亜由美さんを生きたままで連れてきたの?」
「そうです…そして、俺の目の前で、青木先生が平田さんの首をロープで絞めました…平田さんは俺の腕を掴み、とても苦しそうでした」
雅史の淡々とした口調は変わらなかった。
「…平田亜由美さんが殺された時、君は怖かった?」
相田は淡々と答える雅史に、不信感を募らせた。
「怖かったです」
そうは見えないが、雅史はそう答えた。
ドアが開いた。戻ってきた彩花が、相田の耳元で囁いた。
「既に捜査員が、青木の自宅に向かっている最中でした」
「分かった」
相田は雅史から視線を外さないまま、小さく頷いた。
「…山岸裕美さんとはどんな関係?」
相田は話を続けた。
「彼女ではないですが、俺に好意があったみたいですね。それより、山岸さんが言ってましたよ。誰か殺したって…恐らく俺の交際相手の一人だと思うんだけどな」
淡々と語る雅史の言葉は、他人事のように聞こえる。
「…篠沢理奈」
彩花が呟いた。
「えっ?」
雅史は相田の後ろに立つ彩花を見詰めた。
「篠沢理奈さんが誰かに殺されたの」
彩花は雅史を睨み付けた。
「篠沢さん、殺されたんだ」
雅史は驚いた様子を見せなかった。
「えぇ…あなたの彼女が、また殺されたの」
「そうですね」
雅史の口角が上がったように見えた。
「悲しくないの?」
彩花は憎しみの籠もった瞳で雅史を睨み付けた。
「悲しいですよ。彼女ですから」
雅史の目からは涙が流れ落ちる気配はない。相田も嫌悪感を含む瞳で雅史を見詰めた。
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