約束ノート

村上未来

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光と闇

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 青木はポケットから小型のナイフを取り出し、雅史の目を見詰めながら手渡した。

「分かった、分かった」

 雅史はにっこりとしながら、うんうんと頷いた。
 雨が一滴も降っていない、月が綺麗な夜。雅史はレインコートを羽織った。二人は再び歩き出した。
 公園の敷地を横にしながら入口を目指した。立ち並ぶ木の隙間から公園内を見ると、灯りの下にあるベンチに座る明美の姿を捉えた。明美は祈るように両手を組んでいる。青木は立ち止まり、公園内を観察した。
 遊具はブランコと砂場しかない小さな公園だ。その為、公園内を一望できる。

「他には誰も居ないな」

「……」 

 青木の言葉を無視しているのか、聞こえていないのかは分からないが、雅史は何も答えずに歩きだした。
 入口に付いた雅史は、なんの躊躇いもなく公園に入った。
 足音に気付いた明美が顔を上げた。そして、雅史の姿を捉えた。

「雅史君!大丈夫!?」

 ベンチから飛び出した明美は、雅史に抱き付いた。

「あぁ…大丈夫だ…会いたかった」

 雅史は強く抱き締め、悪魔の笑みを浮かべた。

「心配してたんだよ…無事でよかった」

 明美は涙を溜めた瞳で、雅史の顔をじっと見詰めている。

「…ごめんな、心配掛けて」

 雅史は悲しそうな顔をした。

「…あれ?…青木先生」

 近くにいる青木に気付いた明美は、慌てて雅史から離れた。
 明美は直ぐに恐怖心に包まれた。無理もない。青木はこの世のものとは思えない顔で、明美を睨み付けている。

「…青木先生は味方だ…全て事情は話してあるから安心してくれ」

 雅史が優しい笑顔を浮かべ囁いた。
 
「…う、うん」

 明美は自分を睨み付ける青木の顔を見ないように、俯きながら答えた。
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