約束ノート

村上未来

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病院

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「偉いね。健太君は嫌いな物も食べれる偉い子なんだね」

「うん!約束ノートに書いたから、食べなくちゃ駄目なんだ!」

 誉められた健太は興奮している様子だ。

「約束ノート?約束ノートって何?」

 聞き慣れないフレーズを聞き、香織は問い掛けた。

「えっ?」

 急に健太の顔色が曇った。

「健太君どうしたの?大丈夫?」

 香織は健太の変化に気付いた。

「うん…大丈夫」

 健太はノートに書いた約束を破って、洋子に殴られた日々の事を思い出している。

「健太君」

 病室のドアを開け、沢尻が入ってきた。

「あっ、沢尻先生」

 沢尻の顔を見て、健太の表情は明るくなった。

「健太君、あのね…健太君にお話が聞きたいって人達が来てるんだけど…お話できる?亅

「お話?…出来るよ僕」

 健太は首を傾げながら答えた。

「失礼します」

 健太の声が聞こえていたのか、利根川と八重草が病室に入ってきた。
 健太は近付いてくる利根川達を見て、なんとも言えない感情を抱いた。二人が放つ刑事特有のオーラのようなものを、幼いながらも感じ取ったのだ。

「篠原健太君だね?」

 利根川は厳つい顔を崩し、笑顔で尋ねた。

「…うん、そ、そうだよ亅

 利根川から怖さのようなものを感じている健太は、怯えながら答えた。

「看護士さん、出て行って貰えますか」

 利根川の後ろに立っている八重草は、香織の顔をチラッと見て、不躾に言った。

「えっ?」

 香織は八重草を見た後、視線を沢尻に向けた。
 沢尻は無言で頷いている。

「…失礼します」

 心配そうな視界を健太に向けながら、香織は病室から出て行った。

「…健太君は施設で暮らしてたんだよね」

 香織が出て行くと、利根川は口を開いた。
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