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病院
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二人はその手招きに導かれるように、沢尻に近付いた。
沢尻はにっこりと微笑んでいる。健太の顔にも笑顔が浮かんでいる。
不意に健太の視線が動いた。沢尻から視線を外した健太は、部屋の中をキョロキョロと見回している。
部屋の中には、見たこともない装置が何台も置かれている。健太はこの装置で何かをされると思い、急に不安になった。
不安がっている事に気付いたのだろう。沢尻は優しく健太の頭を撫でた。
「今から健太君の体に悪い所がないか調べるからね。痛いことはないから、安心してね」
「…うん」
沢尻の言葉を聞き、健太の不安は少しだけ和らいだ。
「じゃあ、そこのベッドの上に座ってくれるかな?」
沢尻は立ち上がり、シーツの敷いていない、茶色の皮製のベッドを指差した。
健太は、繋いでいる香織の手をギュッと握り締めた。それを感じ取った香織はかがみ込み、健太の目線に自分の目線を合わせた。
「健太君、大丈夫だよ。痛い事なんて何もないからね。お姉ちゃんが約束する」
香織はそう言い、小指を差し出した。
健太は『約束』という言葉を聞き、安堵した。
約束は守らなければならない。健太は洋子に書かされていた約束ノートでその事を学んでいる。故に香織の言葉は、嘘偽りのない物と感じたのだろう。
健太は自分の小指を香織の小指に絡めた。
指切りし終えた健太の顔には笑顔が浮かんでいる。
「よし、じゃあ座ろ」
健太の笑顔を見た香織は、その小さな背中を優しく押した。
健太は駆け足でベッドまで近付くと、ベッドの上にちょこんと座った。
「じゃあ、始めるね」
沢尻は装置に繋がっている、網状のヘルメットのような物を健太の頭に被せた。
健太はさっきまでの不安が嘘のように、ワクワクした気持ちでいっぱいだった。
「よし、準備完了」
準備が終わった沢尻は、装置のスイッチをいくつもオンにしている。
その様子を見ている健太は、ワクワク感が増しているようだ。瞳を輝かせている健太は、今か今かと待ち構えているように見える。しかし健太の期待を裏切るように、何も起こらないまま、沢尻は装置のスイッチを全てオフにした。
「終わったよ」
沢尻は、健太の頭に被せていた物を外した。
「えっ?」
健太は驚きの表情を浮かべ、沢尻の顔を見詰めている。
沢尻はにっこりと微笑んでいる。健太の顔にも笑顔が浮かんでいる。
不意に健太の視線が動いた。沢尻から視線を外した健太は、部屋の中をキョロキョロと見回している。
部屋の中には、見たこともない装置が何台も置かれている。健太はこの装置で何かをされると思い、急に不安になった。
不安がっている事に気付いたのだろう。沢尻は優しく健太の頭を撫でた。
「今から健太君の体に悪い所がないか調べるからね。痛いことはないから、安心してね」
「…うん」
沢尻の言葉を聞き、健太の不安は少しだけ和らいだ。
「じゃあ、そこのベッドの上に座ってくれるかな?」
沢尻は立ち上がり、シーツの敷いていない、茶色の皮製のベッドを指差した。
健太は、繋いでいる香織の手をギュッと握り締めた。それを感じ取った香織はかがみ込み、健太の目線に自分の目線を合わせた。
「健太君、大丈夫だよ。痛い事なんて何もないからね。お姉ちゃんが約束する」
香織はそう言い、小指を差し出した。
健太は『約束』という言葉を聞き、安堵した。
約束は守らなければならない。健太は洋子に書かされていた約束ノートでその事を学んでいる。故に香織の言葉は、嘘偽りのない物と感じたのだろう。
健太は自分の小指を香織の小指に絡めた。
指切りし終えた健太の顔には笑顔が浮かんでいる。
「よし、じゃあ座ろ」
健太の笑顔を見た香織は、その小さな背中を優しく押した。
健太は駆け足でベッドまで近付くと、ベッドの上にちょこんと座った。
「じゃあ、始めるね」
沢尻は装置に繋がっている、網状のヘルメットのような物を健太の頭に被せた。
健太はさっきまでの不安が嘘のように、ワクワクした気持ちでいっぱいだった。
「よし、準備完了」
準備が終わった沢尻は、装置のスイッチをいくつもオンにしている。
その様子を見ている健太は、ワクワク感が増しているようだ。瞳を輝かせている健太は、今か今かと待ち構えているように見える。しかし健太の期待を裏切るように、何も起こらないまま、沢尻は装置のスイッチを全てオフにした。
「終わったよ」
沢尻は、健太の頭に被せていた物を外した。
「えっ?」
健太は驚きの表情を浮かべ、沢尻の顔を見詰めている。
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