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寂れた商店街
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しおりを挟む数日前、ライアのご機嫌を損ねたドニーは、お尻叩きの刑を喰らったばかりだったのだ。痛みは既に引いているのだが、ドニーはお尻が痛いような気がした。
「なぁ、リアン学校終わったら秘密基地に行こうぜ!」
ドニーは自分のお尻を、まだ擦っている。
「うん、いいよ」
リアンはその仕草を見て、可笑しそうに笑った。そして今日の授業は、ライアのご機嫌を損ねる事なく、無事に全て終える事ができた。
姿勢を正し、ライアに別れの挨拶を済ませると、二人は秘密基地へと向かった。
秘密基地とは、数年前に店を畳んだ、町はずれにぽつんと一軒だけ建っている、元楽器屋の建物の事を言っている。今は窓ガラスが割れている空き家だ。
二人は数ヵ月前から、ここで毎日のように遊ぶようになっていた。
「リアン、ピアノ弾いてくれよ!」
秘密基地に着いた途端、ドニーは言った。
笑顔で頷いたリアンは長袖を捲ると、ピアノの鍵盤に指を這わせる。そして勝手に動く指先に任せ、即興で作った曲を奏で始めた。
ドニーは耳を澄ませ、目を閉じ、うっとりとしている。
今リアンが弾いているピアノは、空き家だったこの店に元からあった物だ。見た目はだいぶ傷だらけだ。おそらく楽器屋だった主人が金にならないと思い、持っていかなかったのだろう。しかしリアンはこの場所にくる度、ピアノを丁寧に拭いている。その為だろう、傷だらけではあるが、ピアノらしい光沢を放っている。
ドニーはこの場所に来る度、リアンにピアノ演奏をせがんだ。
芸術が分かるかは定かではないが、リアンの演奏を聴く度、うっとりとしているのだ。
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