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真実
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骨が見えてきた。右手。左手。それに両足。その全てから溢れ出る血に紛れ、白い骨が見えている。
もはや使い物にならないだろう。それは誰が見ても一目瞭然な程、美玲は食い千切られている。
「人間の肉は美味いのか?調理せずに生で食べられるのだな?」
そんな状況になっても、美玲は頭に浮かぶ疑問を、自分を喰らい続ける大男にぶつけた。
「止めろぉぉぉぉ!」
それまでよりも、一際大きな声。伊織は、自分の脇腹に突き刺さる銀色のペンを引き抜くと、何の躊躇いもなく人間を貪る大男の脳天目掛けて振り下ろした。
ぐさり。心地良い音を奏でながら、銀色のペンの先端が大男の脳に到達した。
くるり。そんな音が聞こえてきそうな動きで、大男は今まで存在を認識していなかった伊織へと顔を向ける。
嫌悪感さえ抱く醜い顔。その醜い顔に宿した満面の笑み。その吐き気さえ催す笑顔には、べっとりとした、滴り落ちる血が付いている。
血に濡れた大男の唇の端が、極限まで上がっていく。そして上がり続けた口角が、ぴたりと止まった。それと同じように、大男の体の動きもぴたりと止まった。
「どけぇぇぇ!」
息をしなくなった大男を払い除け、伊織は愛する美玲を抱き締めた。
美玲が口を開いた。
「皇伊織、何故に私を抱き締めるのだ?」
「美玲さん!大丈夫か!?」
「答えてくれ。何故に私を抱き締めるのだ?」
死へと近付いている美玲は、ぐったりとしながらも、その口調は未だはっきりとしている。
「愛してるからに決まってるだろ!」
そう答えた伊織もまた、口調はしっかりしているものの、死へと近付きつつある。二人とも血を流し過ぎたのだ。
美玲は使い物にならなくなった両手を伊織の背中に這わせた。
「愛する者を抱き締めたくなる感情が、私にも分かった。私も皇伊織を抱き締めたいのだ」
美玲は残された力を振り絞り、抱き締め返した。
もはや使い物にならないだろう。それは誰が見ても一目瞭然な程、美玲は食い千切られている。
「人間の肉は美味いのか?調理せずに生で食べられるのだな?」
そんな状況になっても、美玲は頭に浮かぶ疑問を、自分を喰らい続ける大男にぶつけた。
「止めろぉぉぉぉ!」
それまでよりも、一際大きな声。伊織は、自分の脇腹に突き刺さる銀色のペンを引き抜くと、何の躊躇いもなく人間を貪る大男の脳天目掛けて振り下ろした。
ぐさり。心地良い音を奏でながら、銀色のペンの先端が大男の脳に到達した。
くるり。そんな音が聞こえてきそうな動きで、大男は今まで存在を認識していなかった伊織へと顔を向ける。
嫌悪感さえ抱く醜い顔。その醜い顔に宿した満面の笑み。その吐き気さえ催す笑顔には、べっとりとした、滴り落ちる血が付いている。
血に濡れた大男の唇の端が、極限まで上がっていく。そして上がり続けた口角が、ぴたりと止まった。それと同じように、大男の体の動きもぴたりと止まった。
「どけぇぇぇ!」
息をしなくなった大男を払い除け、伊織は愛する美玲を抱き締めた。
美玲が口を開いた。
「皇伊織、何故に私を抱き締めるのだ?」
「美玲さん!大丈夫か!?」
「答えてくれ。何故に私を抱き締めるのだ?」
死へと近付いている美玲は、ぐったりとしながらも、その口調は未だはっきりとしている。
「愛してるからに決まってるだろ!」
そう答えた伊織もまた、口調はしっかりしているものの、死へと近付きつつある。二人とも血を流し過ぎたのだ。
美玲は使い物にならなくなった両手を伊織の背中に這わせた。
「愛する者を抱き締めたくなる感情が、私にも分かった。私も皇伊織を抱き締めたいのだ」
美玲は残された力を振り絞り、抱き締め返した。
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