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未来へ
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物と化した女の姿は、どう見ても寝ているようにしか見えない。
切り口を見詰めていた伊織の目が変わった。臓器が浮かぶ血の海で裸で眠る女。伊織はその光景を美しいと思っているのだろう。伊織の目は、うっとりとしている。
どれ程の時間が経っただろう。部屋の中には、既に剥製師の姿はない。部屋に残るのは、女の剥製と伊織と臓器の数々。時間を忘れたように、伊織は未だ女の剥製を見詰めている。
「コンコン」
部屋のドアがノックされた。
「…誰だ?」
二人の時間を邪魔された事に不機嫌になった伊織だが、それも開かれたドアの向こうに立つ者の姿を見てすぐに直った。
「居場所が分かったんだな?」
伊織の質問に、部屋に入ってきた大男は大きく頷いた。
「何処だ?」
今すぐにでも飛び出したい心を落ち着かせ、伊織は冷静に尋ねた。
「安田旅館」
大男はそう言いながら、右の壁を指差した。その方角に、その旅館があるのだろう。
「案内しろ」
伊織はそう言うと、女の剥製に別れを告げる事なく部屋を出た。
車に乗り込んだ伊織は、急かす気持ちを抑え付け、大男の案内の元、車を走らせている。
夥しい量の血。動きながら取り出されていった臓器。そして完成した女の剥製。伊織の頭の中に、先程見ていた光景が広がっている。しかし、実際に見たものと事なるものを頭に思い浮かべていた。女の顔が違うのだ。美玲の顔にすげ替えられている。
アクセルを踏み込んだ。抑え付ける事ができなかった。車は法定速度を越えている。道は空いている。前方に走る車はない。
目的地である旅館は、それ程遠くはなかった。飛ばしてきた事もあるが、十分程で着いた。
手に入る。手にできる。伊織は興奮に似た感情に包まれている。
彼らしくないが、伊織は忘れているようだ。美玲に催眠術を掛けられなかった事実を。
切り口を見詰めていた伊織の目が変わった。臓器が浮かぶ血の海で裸で眠る女。伊織はその光景を美しいと思っているのだろう。伊織の目は、うっとりとしている。
どれ程の時間が経っただろう。部屋の中には、既に剥製師の姿はない。部屋に残るのは、女の剥製と伊織と臓器の数々。時間を忘れたように、伊織は未だ女の剥製を見詰めている。
「コンコン」
部屋のドアがノックされた。
「…誰だ?」
二人の時間を邪魔された事に不機嫌になった伊織だが、それも開かれたドアの向こうに立つ者の姿を見てすぐに直った。
「居場所が分かったんだな?」
伊織の質問に、部屋に入ってきた大男は大きく頷いた。
「何処だ?」
今すぐにでも飛び出したい心を落ち着かせ、伊織は冷静に尋ねた。
「安田旅館」
大男はそう言いながら、右の壁を指差した。その方角に、その旅館があるのだろう。
「案内しろ」
伊織はそう言うと、女の剥製に別れを告げる事なく部屋を出た。
車に乗り込んだ伊織は、急かす気持ちを抑え付け、大男の案内の元、車を走らせている。
夥しい量の血。動きながら取り出されていった臓器。そして完成した女の剥製。伊織の頭の中に、先程見ていた光景が広がっている。しかし、実際に見たものと事なるものを頭に思い浮かべていた。女の顔が違うのだ。美玲の顔にすげ替えられている。
アクセルを踏み込んだ。抑え付ける事ができなかった。車は法定速度を越えている。道は空いている。前方に走る車はない。
目的地である旅館は、それ程遠くはなかった。飛ばしてきた事もあるが、十分程で着いた。
手に入る。手にできる。伊織は興奮に似た感情に包まれている。
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