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道具集め
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黒塗りの門は客を出迎えるように開いている。伊織はなんの断りも無く、敷地内に足を踏み入れた。
門から玄関へ通じる石畳の周りには、草木が生えている。ちゃんと手入れがされているようだ。
引き戸の玄関の横には、インターホンらしきものは見当たらない。伊織はなんの躊躇いも無く、その引き戸に手を掛けた。
「ガラガラ」
鍵が掛かっていなかった引き戸が、音を奏でながら開いた。
「誰?」
廊下の向こうから声が聞こえた。
伊織はその声がする方へと、土足のまま突き進んだ。
「誰?何か用?」
木製の扉の向こうから声がした。伊織はその扉を開けた。
若い女がいた。女は、男が着る甚平のような赤色の和服を着ている。女は畳の上で正座をしている。
伊織が尋ねた。
「菱形右京は居るか?」
「私だけど、何か用?」
そう答えた右京は、肝が据わっているのかもしれない。落ち着いているように見える。
伊織は自分の五メートル以内にいる誰でもを催眠術に掛ける事が出来ると確信している。右京はその射程圏内にいる。
「立て」
伊織はそう言いながら、右手を下から上へとすぅーっと移動させた。
その右手と同調するように、右京がすぅーっと立ち上がった。
「刺青を彫る道具を持ってこい」
その言葉を聞き、右京の体が動いた。
右京は入り口付近に立つ伊織の横を通り抜けた。そして暫くすると、木製の鞄を抱え戻ってきた。
「持ってきたぞ」
伊織の前に戻ってきた右京は、真っ直ぐに伊織の目を見詰めている。
右京は美しい顔立ちをしている。
伊織は、右京が無意識に醸し出しているその色香に、皆無と言っていい程、興味を示していない。
「お前は見た目は若いが、刺青を彫って何年になるんだ?」
「三年だ」
「これまでに何人の奴に入れた?」
「数えてはいないが、二十人程だろう」
右京は聞かれた事を淡々と素直に答えている。
催眠術の影響もあるかもしれないが、別に隠すような事ではないのだろう。
「…まぁ、いい。ついてこい」
伊織は入り口の前に立つ右京を右手の甲で払い除けると、玄関に向け歩き出した。
門から玄関へ通じる石畳の周りには、草木が生えている。ちゃんと手入れがされているようだ。
引き戸の玄関の横には、インターホンらしきものは見当たらない。伊織はなんの躊躇いも無く、その引き戸に手を掛けた。
「ガラガラ」
鍵が掛かっていなかった引き戸が、音を奏でながら開いた。
「誰?」
廊下の向こうから声が聞こえた。
伊織はその声がする方へと、土足のまま突き進んだ。
「誰?何か用?」
木製の扉の向こうから声がした。伊織はその扉を開けた。
若い女がいた。女は、男が着る甚平のような赤色の和服を着ている。女は畳の上で正座をしている。
伊織が尋ねた。
「菱形右京は居るか?」
「私だけど、何か用?」
そう答えた右京は、肝が据わっているのかもしれない。落ち着いているように見える。
伊織は自分の五メートル以内にいる誰でもを催眠術に掛ける事が出来ると確信している。右京はその射程圏内にいる。
「立て」
伊織はそう言いながら、右手を下から上へとすぅーっと移動させた。
その右手と同調するように、右京がすぅーっと立ち上がった。
「刺青を彫る道具を持ってこい」
その言葉を聞き、右京の体が動いた。
右京は入り口付近に立つ伊織の横を通り抜けた。そして暫くすると、木製の鞄を抱え戻ってきた。
「持ってきたぞ」
伊織の前に戻ってきた右京は、真っ直ぐに伊織の目を見詰めている。
右京は美しい顔立ちをしている。
伊織は、右京が無意識に醸し出しているその色香に、皆無と言っていい程、興味を示していない。
「お前は見た目は若いが、刺青を彫って何年になるんだ?」
「三年だ」
「これまでに何人の奴に入れた?」
「数えてはいないが、二十人程だろう」
右京は聞かれた事を淡々と素直に答えている。
催眠術の影響もあるかもしれないが、別に隠すような事ではないのだろう。
「…まぁ、いい。ついてこい」
伊織は入り口の前に立つ右京を右手の甲で払い除けると、玄関に向け歩き出した。
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