殺しの美学

村上未来

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変わらぬ未来

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「大輝、ここの特等席で、恭子ちゃんの変貌ぶりをちゃんと見てなさい」

 宗二は有無を言わさぬような顔をしている。
 抗うという行動の存在さえ忘れてしまったかのように、大輝はこくりと頷いた。

「…恭子ちゃんお待たせ…続きを行うよ」

 宗二の握るナイフが、再び恭子の体の上で踊り出した。
 活き活きと動き回るナイフに対して、弱々しくなっていく恭子の悲鳴。そしていつしかその悲鳴は、呻き声へと変わった。それは、死へのカウントダウンが始まった事を意味している。


「あーあ、楽しい時間ももう終わりなのかな」

 口を尖らせて、物足りないような表情をしている宗二は、傷だらけになった恭子の体を舐めるように見ている。
 動脈は避けて切られていたものの、恭子の下の真っ白だったシーツは、赤く染まっている。
 この残酷なショーが始まってから、三十分程経っている。
 傷一つ一つからは、集中して血は流れてはいない。だが、数え切れぬ程の傷を付けられた恭子の体からは、かなりの量の血が失われている。
 このまま何もされなくても、恭子の命は一時間も保たないだろう。しかし、この男がこのまま黙って死んで行く様を見ている訳がない。案の定、宗二は次の行動に向け動き出した。

「じゃじゃーん。これが何だか分かるかな?」

 レインコートの中から引き抜かれた宗二の手には、鋼色のペンチが握られている。
 呻き声しか上げない恭子を見て、宗二は首を傾げた。

「もう、答える気力もないのかな?でも、痛みはまだ感じるでしょう?」

 宗二がにっこりと笑った。
 ペンチが徐に動いた。迷い無く、真っ直ぐにペンチが向かったその先にあるのは、傷の付いていない白い柔肌。
 何の躊躇いもなくペンチに摘ままれたその白い柔肌が、瞬時に色付いた。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 乳房をペンチで潰されている恭子の口からは、呻き声とは異なるものが再び上がり始めた。
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