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ある家族
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ある日の夜。大輝は宗二を風呂に入れて部屋に送り届けた。
「…大輝、本棚の前まで連れて行ってくれ」
大輝はベッドに寝かせたら、直ぐに出て行くように宗二から言われている。こんな事は初めてだ。大輝は車椅子の宗二を、壁際に置かれた本棚の前へと連れて行った。
「…大輝、父さんの意志を継いでくれないか?」
そう言った宗二は、返事を待たずに、本が載った棚の一部を手前に引いた。
本棚の奥から、カチッという音が聞こえてきた。
「本棚を右にスライドさせてくれ」
大輝は静かに頷くと、棚の一部が飛び出したままの本棚を掴み、右に向かい力を込めた。本棚が静かな音を立て、右に動いた。
本棚があった場所に、人一人が通れる程の穴が出現した。いや、穴ではなく、入り口と言った方が正解だろう。
「背負って、中に入ってくれ」
入り口を見詰め、戸惑っている大輝の背中に、宗二は静かな声で囁いた。
大輝は宗二を背中に背負い、その入り口へと足を踏み入れた。しかし、その足の動きは直ぐに止まった。脳の奥深くに眠らせた記憶が蘇ったのである。
目の前には階段がある。階段を下れば、幼い頃、宗二に閉じ込められた地下室がある。
大輝は額に汗を滲ませ、薄暗い階段の先を、見開いた目で見詰めた。
「…どうした?地下室に連れて行ってくれ」
立ち止まった大輝の耳元に、そのトラウマを作り出した者の囁き声が絡み付いた。
「…はい」
静かに返事をすると、頭に絡み付く残像を振り払い、大輝の足は地下室へと続く階段を下り始めた。
「…大輝、本棚の前まで連れて行ってくれ」
大輝はベッドに寝かせたら、直ぐに出て行くように宗二から言われている。こんな事は初めてだ。大輝は車椅子の宗二を、壁際に置かれた本棚の前へと連れて行った。
「…大輝、父さんの意志を継いでくれないか?」
そう言った宗二は、返事を待たずに、本が載った棚の一部を手前に引いた。
本棚の奥から、カチッという音が聞こえてきた。
「本棚を右にスライドさせてくれ」
大輝は静かに頷くと、棚の一部が飛び出したままの本棚を掴み、右に向かい力を込めた。本棚が静かな音を立て、右に動いた。
本棚があった場所に、人一人が通れる程の穴が出現した。いや、穴ではなく、入り口と言った方が正解だろう。
「背負って、中に入ってくれ」
入り口を見詰め、戸惑っている大輝の背中に、宗二は静かな声で囁いた。
大輝は宗二を背中に背負い、その入り口へと足を踏み入れた。しかし、その足の動きは直ぐに止まった。脳の奥深くに眠らせた記憶が蘇ったのである。
目の前には階段がある。階段を下れば、幼い頃、宗二に閉じ込められた地下室がある。
大輝は額に汗を滲ませ、薄暗い階段の先を、見開いた目で見詰めた。
「…どうした?地下室に連れて行ってくれ」
立ち止まった大輝の耳元に、そのトラウマを作り出した者の囁き声が絡み付いた。
「…はい」
静かに返事をすると、頭に絡み付く残像を振り払い、大輝の足は地下室へと続く階段を下り始めた。
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