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「病院に行くのが、嫌なのか?」
「やだ!やだよ!」
余程嫌なのだろう。ペコは自分の身を守るように、肩を抱き締め涙目を浮かべている。
美玲は目をぱちくりとさせペコを凝視している。
「人の嫌がる事はしてはならないな。うむ、病院に行くのはやめにしよう」
「…ほんと?」
「うむ、本当だ」
うんうんと美玲は頷いた。
「よかった…ママ大好き!」
安堵した途端、ペコは美玲に抱き付いた。
「しかし、今日は安静にしておいた方がよいな。直に朝飯になるだろう。その時にでも、連泊する旨を伝えよう」
時間が流れ、午前十時過ぎ。捜査を続ける警察で動きがあった。
宗二は自分名義で車を五台所有している。車庫は全台、自宅で登録されている。しかし、自宅のガレージには、四台の車しか停まっていなかった。
家政婦の秀子に話を聞いた所、ガレージは定期的に掃除をしているそうだ。秀子は五日前にガレージの掃除をしている。その時は、五台の車が停まっていたそうだ。
これまで宗二は、車を誰かに貸すような事はした事がなかった。秀子も誰かに車を貸すとは聞いていない。
警察はガレージから消えた黒色の国産車の行方を探すと共に、自宅近辺の防犯カメラの映像を隈無くチェックする作業に入った。
車を持ち去った人物は直ぐに特定できた。宗二の息子の大輝だ。自宅近辺の国道に設置された防犯カメラに、車を運転する姿が映っていた。
宗二が殺害されたと思われる、十月十九日の午前零時過ぎ。その時間に、宗二が所有する黒色の国産車を運転する大輝の姿をカメラが捉えていた。
鈴が死んでから、約一ヶ月。伊織は鈴を殺害した館山の別荘に来ていた。
この一ヶ月の間、伊織は若い女性の多くの命を奪い去っている。命を奪われた被害者の全てが、催眠術を掛けられ自ら命を落としている。
自らの手で心臓にナイフを突き刺した者。高層ビルから身を投げた者。その手口は毎回違うものだ。
そんな殺害を繰り返す中、伊織はもやもやとしていた。
確かに、死んで行く者のその顔は美しい。しかし、人生で初めて愛を注いだ相手である鈴に敵う者はいなかった。鈴より美しい死に顔に出会えなかったのだ。
「やだ!やだよ!」
余程嫌なのだろう。ペコは自分の身を守るように、肩を抱き締め涙目を浮かべている。
美玲は目をぱちくりとさせペコを凝視している。
「人の嫌がる事はしてはならないな。うむ、病院に行くのはやめにしよう」
「…ほんと?」
「うむ、本当だ」
うんうんと美玲は頷いた。
「よかった…ママ大好き!」
安堵した途端、ペコは美玲に抱き付いた。
「しかし、今日は安静にしておいた方がよいな。直に朝飯になるだろう。その時にでも、連泊する旨を伝えよう」
時間が流れ、午前十時過ぎ。捜査を続ける警察で動きがあった。
宗二は自分名義で車を五台所有している。車庫は全台、自宅で登録されている。しかし、自宅のガレージには、四台の車しか停まっていなかった。
家政婦の秀子に話を聞いた所、ガレージは定期的に掃除をしているそうだ。秀子は五日前にガレージの掃除をしている。その時は、五台の車が停まっていたそうだ。
これまで宗二は、車を誰かに貸すような事はした事がなかった。秀子も誰かに車を貸すとは聞いていない。
警察はガレージから消えた黒色の国産車の行方を探すと共に、自宅近辺の防犯カメラの映像を隈無くチェックする作業に入った。
車を持ち去った人物は直ぐに特定できた。宗二の息子の大輝だ。自宅近辺の国道に設置された防犯カメラに、車を運転する姿が映っていた。
宗二が殺害されたと思われる、十月十九日の午前零時過ぎ。その時間に、宗二が所有する黒色の国産車を運転する大輝の姿をカメラが捉えていた。
鈴が死んでから、約一ヶ月。伊織は鈴を殺害した館山の別荘に来ていた。
この一ヶ月の間、伊織は若い女性の多くの命を奪い去っている。命を奪われた被害者の全てが、催眠術を掛けられ自ら命を落としている。
自らの手で心臓にナイフを突き刺した者。高層ビルから身を投げた者。その手口は毎回違うものだ。
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